第一章
I
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ヴィルベルトを、ミケルは必死になって留めようとした。
だが、二人は尚も帰ろうとするため、ミケルは彼らにこう言ったのだった。
「これが解決したら、報酬として二万ゴルテ出します!」
二万ゴルテ。要は金貨二万枚出すと言ったのである。
一般民の一月の労働報酬は、平均四十八エルナ…銅貨四十八枚なのである。それを考えると、二万ゴルテはとんでもない金額であり、それを支払うと言うことは、それ相応の危険を伴うと言うことでもある。
しかし、それを聞いたルーファスとヴィルベルトは、直ぐ様ミケルへと振り返って言ったのだった。
「喜んでお引き受けします!」
…二人は貧乏なのだ。大陸中を旅しているため、常に資金は必要。そのために行く先々の街や村などで働き、旅費を捻出してから次の旅に出るの繰り返しなのである。
二万ゴルテ…それだけあれば、数年間は働かずして旅を続けられるというものなのだ。
「良かったぁ!それじゃ、お座り下さい。」
ミケルがホッとして二人を座らせた時、不意に扉がノックされた。
「お入り。」
ミケルがそう言うと扉が開かれ、そこからルーファスらを案内してくれた召し使いがお茶を持って入って。
「失礼致します。旦那様、お茶をお持ち致しました。」
彼女はそう言うや、先ずは主の前にお茶を置き、次いでルーファスとヴィルベルトの前に置いた。
お茶を持ってくるにはかなり遅いと思うが、中の三人が珍妙な寸劇を繰り広げていたため、彼女が入りずらかったであろうことは窺える。
彼女が淹れてくれたお茶は、その香りからかなり高価なものだと分かった。その上、お茶請けにブラウニーとバターケーキまで出され、目の前の依頼人よりも召し使いに二人は恐縮してしまった。
この時代、チョコレートもバターも高級なもので、こんな下っ端に出すような代物ではないのだ。
尤も、仕事が仕事なだけに、予めミケルが用意させていたとは思うが。
「今日は随分奮発したねぇ。」
「はい。お客様がお出でになると聞いておりましたので。それでは、私はこれで失礼致します。」
彼女はそう言うや、そのまま部屋を出て行ったのだった。
「あの人…召し使いですよね?」
ヴィルベルトは彼女が出て行ったのを見計らって、囁くようにミケルへと言った。
「はい。それがどうかされましたか?」
「いえ…服が随分と高価な布で出来ていたようなので…。」
気になっていたのは、彼女よりも衣服であった。
一般に、召し使いの衣服はそう良い布を使わない。それこそ始終動き回っているため、質より量なのだ。
だが、先程の召し使いが着ていた衣服は、伯爵クラスの布で仕立てられていたのである。ヴィルベルトが驚くのも無理はない。
「あれですか?女性は常に美しくあって然るべきですよね?ですから、身形を整える分は給金
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