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魔術師ルー&ヴィー
第一章
I
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いらした筈だが?」
 ルーファスが言った老ファルケルだが、この大陸の中でも特に力の強い神官で、生きた聖人とさえ言われている。"大神官"とは老ファルケルに与えられた称号であり、甥に同じ名を持つ者がいるために老ファルケルと呼ばれる。
 彼は齢七十でこの街の古びた聖堂に移り住み、その聖堂の番人として余生を送っているはずなのであった。
「老ファルケル殿なんですが…半年程前に逝去されたのです。」
 それを聞き、二人は目を丸くした。
「えっ!?俺、そんなこと聞いてねぇぞ!?あれだけの人物が逝去されたんなら、葬儀も大々的に執り行われる筈だろう?」
「そうですよね…。私も全く知りませんでした。それどころか、公爵様のところですら話題になりませんでしたしね…。」
 二人がそう言うと、ミケルは深い溜め息を洩らして返した。
「実はですね…老ファルケル本人の意向で、葬儀は彼の弟と二人の妹の家族で内々に済ませたそうです。告知もしてはならないときつく言われていたようで、告知をするならば死後一年経ってから…と厳命されていたと聞いています。ですが…」
 そこまで言うと、ミケルは再び大きな溜め息を吐き、そうして後を続けた。
「老ファルケルの死を知った神官と司祭達は、皆この街から出ていってしまいまして…。」
「ちょっと待て。大神官一人が逝去したからって、なんでここから出ていく必要があんだよ。それこそ、やつらにとっちゃ師とも呼べる人物が守ってたもんを守る義務もあるんじゃねぇのか?」
 ルーファスは不機嫌な顔をしてそう言うと、隣に座るヴィルベルトが何か思い当たった様で、ミケルが再び話し始める前に割って入った。
「師匠。もしかして…老ファルケルが守っていた聖堂って、以前に司祭クラウスが守っていた聖堂なんじゃないですか…?」
「クラウス…って、あの魔術師から司祭になった異例の天才か?ありゃ五十年も前の話だろ?」
「ですが、クラウスがわざわざ聖堂を拡大してまで守った理由…それが関係してるとすれば?」
 ヴィルベルトがそう言うや、ルーファスの表情が強張った。
「まさか…。」
「そうですよ。この地方って、例の魔術実験で妖魔を呼び出し、そのせいで甚大な被害が出たんです。確かその妖魔を封じた石碑があったはず。あの聖堂って、その石碑を守るために拡大されたと考えた方が…。」
 ヴィルベルトがそこまで言ったかと思うと、スッとルーファスは立ち上がって呟くように言った。
「…帰るぞ…。」
 そう言ってクルリと背を向けて歩き出そうとしたが、ミケルは直ぐ様ルーファスの腕を掴んで止めて言った。
「待って下さいってば!」
「ふざけんな!もし妖魔なんぞ目覚めさせたら手に負えねぇっての!」
「だから貴方を呼んだんです!」
「もっと悪いわ!」
 振り切って部屋を出ようとするルーファスと
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