第一章
I
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ル・テミングの所へと向かった。
この女公爵の治める地方はヴィンディヒと呼ばれ、その名の由来は"風の強い"という意味の古語に由来していると言われている。その理由としては、この地が常に海からの強い風を受けているからであり、この国を興した初代国王がその名を付けたとか。
「ったく…今日もひでぇ風だ…。」
ルーファスはそう愚痴を溢した。防風林はあるものの、完全に風を防げる訳もなく、彼はその長い髪を風に靡かせていた。
「師匠!その髪邪魔です!」
「うっせぇ!俺の髪が悪いんじゃねぇ!この風が悪いんだっての!!」
そう言い合いながらも、二人は街中を歩いて行く。
この街の中央通りは広い。さすが女公爵の治める第一位の街である。が、その中を歩く二人には、かなりの視線があたっていた。二人の風体や容姿がこの街に全くそぐわないのだ。
まず、ルーファスは先に述べた通りの長髪で、それを後ろで一括りにしている。その髪の色は銀色で、この大陸にあってもあまり多くはない。その上、瞳の色は蒼く、それも珍しいのだ。弟子たるヴィルベルトは、髪は金色で肩ほどの長さにしてあり、瞳は薄い茶色をしている。二人共に容姿端麗、身長もかなり高いとくれば、嫌でも人目を引く。
さて、二人にとっては人目なぞどうでもよく、文句を言い合いながらも街長の家へと赴いた。
ルーファスが呼鈴の紐を引くと、暫くして召し使いが扉を開き、直ぐに街長であるミケルの元へと通されたのであった。
家…と述べたが、そこは館と言って良い程の広さがある。たが貴族のそれとは違い、ここは質素な造りであった。調度品も彫刻などの飾りも無いものの、それ故か落ち着けるところである。
「よくおいで下さいました。私が主のミケルです。さぁ、どうぞこちらへお座り下さい。」
案内した召し使いが扉を開くや、その家の主が満面の笑みで迎えてくれた。 彼はルーファスやヴィルベルトより背は無いが、ガッシリした体格に栗色の髪が印象的な好青年であった。
ミケルは二人を招き入れて座らせると、自らもテーブルを挟んで正面の椅子へと腰掛けた。
最初はいきなり笑顔で話し掛けられたため面食らってしまった二人だったが、こうして見るとかなり若いことに驚いていた。
女公爵には幼馴染みの息子…と聞いていたからであるが、ミケルは末子なのである。長兄とは二十歳以上年が離れているのだから、驚くのも無理のないことである。
そもそも、ミケルは後妻の子供である。先妻が病で亡くなって後、ミケルの父が再婚したのであるが、その時には四十近くになっていた。
では、なぜ後妻の子供がこの若さで街長の職を継いだのかと言えば、前の街長であったミケルの父が遺言を遺さず逝ったからである。要は兄弟のだれもが街長になりたがらず、よって末子のミケルが引き受けたのであった。
街長は
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