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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十四話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その4)
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と容赦しない怖い男がいる」
ヤン准将の言葉にワイドボーン准将が揶揄するような口調で続けました。視線はヴァレンシュタイン准将に向けられています。
みんながヴァレンシュタイン准将を見ましたが准将は全く無視です。そんな准将を見てシトレ元帥が苦笑して言葉をかけました。
「ヴァレンシュタイン准将、何か言ったらどうかね」
「ハイネセンに戻ったらクブルスリー提督には訓練に励んでもらった方が良いでしょう。これからは第一艦隊にも戦場に出てもらうべきです」
他人事のような口調にシトレ元帥がまた苦笑しました。元帥は多分ワイドボーン准将に反論しろと言ったのだと思います。それなのに……多分わざとです。
「今回は見逃すという事か、クブルスリーも必死になるだろうな」
「そういう意味では有りません、毎回第五、第十、第十二艦隊に頼ることは出来ないと言っているのです」
面白くもなさそうに答える准将の言葉にシトレ元帥が渋い表情をしました。元帥だけではありません、皆が渋い表情をしています。皆、艦隊司令官が頼りにならない、そう思っているのでしょう。
「分かっている、私もその事は考えているよ」
シトレ元帥の言葉にヴァレンシュタイン准将を除く全員が顔を見合わせました。考えている、つまり元帥は艦隊司令官を代える事を考えている……。
前回は第四、第六艦隊の司令官が交代しました。今度交代になるのは誰か? 第一艦隊のクブルスリー提督はこれまでの会話からその地位に留まりそうです。おそらくは第二、第三、第七、第八、第九、第十一から選ばれるのだと思いますが一体誰がその後任になるのか……。
クブルスリー提督がこの話を聞いたらほっとするでしょう。此処で交代などとなったら無能と烙印を押されたようなものです。この先の出世は先ず望めません。明らかに同盟軍は実力重視の戦う集団に変わりつつある、そう思いました。
「ミハマ少佐、別働隊が来るまであとどのくらいかな?」
シトレ元帥が低い声で問いかけてきました。相変わらず渋くて格好いいです。グリーンヒル中尉も時々“渋いですよね”と言っています。
「あと八時間ほどでこちらに合流する予定です」
「そうか……、あと八時間で勝敗が決まるわけだな」
呟く様な元帥の声でした。私には何処となく不安そうに聞こえました。
「大丈夫です、我々は必ず勝てます」
私と同じことを思ったのでしょう、ワイドボーン准将が元帥を励ましましたが元帥は溜息を吐きました。
「勝ってもらわなければ困る、十万隻もの大軍を動かしたのだからな。政府を説得するのも大変だった」
「上手く行けば帝国軍艦艇約七万隻、兵員約七百万を捕殺できます。チマチマ艦隊を動かすよりはずっと効率的です。費用対効果で言えば十分に採算は取れると言って良いでしょう。結果が出れば政府も
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