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歌集「春雪花」
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 夕されば

  のびにし影の

   虚しける

 重なる影の

    なきを思へば



 空が茜色に染まる夕暮れ…影は棚引く雲の様に色濃く地に落ちる…。

 会社帰りの人や学校帰りの学生達が行き交う中、私は虚しく落ちた影を見つめる…。

 ここに彼はいない…そんな当たり前なことに寂しくなり…私の隣に重なる影がないことに哀しくなった…。



 想ふ夜の

  月影待つも

   見えざりて

 ため息つかば

    梢さざめき



 彼に会いたい…そう思い続けても叶わぬ日々…。

 それでも彼のことを想い続けて見上げた夜空に月はなく…少しでも顔を見せてはくれまいかと待っていても、月は一向にその姿を見せてはくれない…。

 あぁ…まるで彼のようだと溜め息をついた時、風に揺れて木々の梢がざわめいた…。


 愚かな私を笑っているかのように…。




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