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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第170話 シュラスブルグ城潜入
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して、最低でも金行による攻撃を無効化させる術は行使して置かなければならない。
 いくら俺でもその後の事を考える……例えば剪紙鬼兵が倒された時に俺に返って来る返りの風対策や、そもそも俺自身が戦いに参加しなければならない点を考慮すれば、すべてを自前の霊力で賄うのはかなり難しい。

「最悪の場合、戦後数年間ほど凶作が続いて、更に疫病や天変地異が頻発する可能性もある」

 そしてその結果、徐々に街自体の繁栄が失われて行く事となる。
 レイラインや地脈と呼ばれるモノが力を失うと言うのはそう言う事。まぁ、王を産み出す気も同時になくなるので、これから先……少なくとも百年単位で、アルザス発の内乱は起こらなくなる事も確実なのだが。
 この部分だけを聞くと良い事のように感じるかもしれないが、地脈と言うのはその地方だけで完結している物ではない。アルザスに集まっている地脈は当然のように別の地方にも繋がっているので、ここで起きた地脈の乱れによる混乱がまったく別の場所で、更に大きな被害を発生させる可能性も非常に高く成る。

 もっとも、これは本当に最悪の可能性。大半の場合、小細工で一時的に地脈を弄ったとしても戦後に適切な処置を行えば大きな問題は残らない事の方が多い。

 但し、今回の作戦が失敗して俺やその他の地脈を制御出来る能力者が全員死亡した場合は、後にどう言う事が起きるのか分からないのだが。

「流石に、その話を聞いては無理ですな」


☆★☆★☆


 堅牢な中世ヨーロッパの城内。魔法に因る明かりは元より、たいまつ、更に言うと明かり取り用の窓さえ存在しないここには、ほんの僅かな月明かりさえ差し込む事はない。
 しかし――
 しかし、ここが真なる闇の中であろうとも今の俺たちの動きには何の問題もない。そもそも、闇に因り行動を阻害される程度の術者ならば、このような危険な作戦を実行する訳はない。

 自らの足元に伏せていた二頭の魔狼を呪符へと還すタバサ。
 周囲には肉が腐ったかのような鼻を突く臭気と、そして隠しきれない鉄さびにも似た異様な臭いが充満している。
 いや、少し違うか。そう考え、首を横に振る俺。
 ここにはもうひとつ、異様な臭いが微かに漂っていた。
 それは、病院などで嗅ぐ事の出来る薬品の香り。二十一世紀の世界からやって来た俺の感覚からすると、人の死に関わる場所に漂って居たとしても何ら奇妙でもない香りなのだが、ここハルケギニア世界の医療技術は中世ヨーロッパレベル。更に言うと、ここは戦場の最前線。ここでは濃い血臭を感じたとしても不思議でも何でもないが、二十一世紀の日本の病院で嗅ぐ事の出来る薬品の臭いに似た香りが血の臭いの中に混じると言うのは……。

 暗黒に包まれた状況故にはっきりと見えている訳ではないが、靴が伝えて来る石
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