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フロンティアを駆け抜けて
ブレーン達は舞台袖で幕間の余興を見る
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を襲うヒールまで用意し、死のぎりぎりまで追い詰めておきながら平然と父親として接していた人物とは思えない。

「……二十年だ。貴様がチャンピオンになってからの二十年、観客の笑顔とやらのためにどれだけ他人の気持ちを踏みにじってきた?」

 ドラコの予想ではこれが初めてではない。チャンピオンはずっと見ている人の笑顔のためにチャンピオンとしての地位を守り続けた人間。彼がチャンピオンとして行ってきた多くの戦いはドラコ含め、ホウエン中の人間を魅了してきたと言っていい。だからこそジェムはあれほどまでにサファイアを信じていたのだから。だがそれは今のジェムのように、仕立て上げられた人間達の本気を利用したものだった。ダイバが真実を暴かなければ、ジェムもやはり何も知らず苦難の末にシンボルを集めきったフロンティアの主人公としてサファイアに挑んでいたはずだった。
 
「厳密には十五年だ。私は私自身のみで行える戦いに限界を感じた。だから――」
「だから他人を自分のシナリオ通りに動かし、あまつさえ自分の娘を巻き込むことも厭わない……そう言いたいのか貴様は」
「……そうだ。非難したければしてくれて構わない。私はかつて誓ったのだ、八百長ではない、お互いの気持ちをぶつけ合う本当のポケモンバトルでみんなを笑顔にしてみせると」

 サファイアの表情には騙した人間の愉悦も、娘に対する罪の意識も感じられない。ただジェムに向ける目線が、ひたむきに彼女を信じていることが伝わってくることにドラコが歯噛みする。何より許しがたいのはサファイアがはぐらかさず答えていることだ。この事は既に一般に知られても構わないと彼は判断している。つまりはサファイアのポケモンバトルを楽しんでいる人々にとってはジェム達のこの状況もあくまで一人の少女が仲間と共に危機を乗り越えるエンターテイメントでしかないのだ。サファイアが狂っているから観客たちが感化されたのか、観客たちが楽しむために誰かが犠牲になるのを厭わないからサファイアが狂うしかなかったのか。ドラコにわかるはずもない。何より――

「知らんな。そんなことは『私達』の管轄外だ。やはりジェムを貴様と戦わせるわけにはいかん。『お前達』のくだらん楽しみなど、私のドラゴン達が破壊してやる……さあ、次のポケモンを出してみろチャンピオン!」

 どんな信念も覚悟も、ジェムやその仲間たちが付き合う必要など毛頭ないのだ。ドラコは最初はとある人物の頼みで協力していたが、ジェムの未熟ながらも真っすぐな思いを認めた。ドラコの聞いていた計画ではアルカはアマノと一緒に警察に捕まっているはずだったしダイバもジェムに心を開くことはなく倒すべき敵としか見なかったはずだ。だがその予測を超え今三人ともがジェムについている。

「なるほど面白い。ならば私は……君達が私に
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