出逢い
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「ソフィアさん、またいずれ会うこともありましょう。それでは失礼します、レディ」
それだけ言うと、ベリルはもときた方に向かって歩いていってしまった。
ぼぅ〜と突っ立ったまま、ベリルの後ろ姿を見送るソフィアに、声が飛ぶ。
「お別れの挨拶は済んだみたいね〜」
「もしかして、ベリル様ってソフィアの好みだったりする〜?」
帰り支度をしていた2人がソフィアをからかう。
「男性なのに、ものっ凄く綺麗だったわよねぇ…。あんまり綺麗すぎて、ウチはあんまり好みじゃあないけどね」
「好み…?」
ソフィアは修道院育ち。
それまで、男性と言えば、教会の神父やエクソシストといった『上司』しか知らなかった。賄い担当であれば物資の配達等で、力仕事を手伝う集落の住民を見る事も有ったのだろうが、ソフィアの場合は野草摘みや修道院の畑でハーブや野菜を育てる事が多かった。
珍しく、貴族がやって来ても、対応するのは院長や副院長である。それ故ソフィアは男性とは縁遠い存在であった。
「あんなに綺麗な人、初めて……。『好み』かどうかなんて分からないけど、なんか目が離せなかったの…」
「その割には、やけに熱っぽく見つめてたじゃないのさ」
「ウチの故郷の町にも貴族は居たけど、あそこまで浮世離れした美貌はいなかったよ?どっちかっていうと、腹が出っ張った狸オヤジってヤツぅ〜?」
「何それぇ〜っ。アハハ」
べティは町娘なので俗世の知識が豊富である。
各々がお互い知らない知識を持っているため、この三人なのだろう。
『好み』とは、パッと見で『好き』な男性を指すのだという。そして、たった一度見ただけで好きになってしまう事を『一目惚れ』と言う事も教わったソフィア。
(ベリル様を好きになってしまったのかしら………)
どうにも、自分を射るように見つめてくる深紅の瞳が忘れられなかった。
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