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真田十勇士
巻ノ九十二 時を待つ男その十三

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「共に死ぬべきですか」
「そうされよ、死ぬ時でないと思えばな」
「生きるべきですか」
「十一人でな」
「それでは」
 幸村も頷いた、そして今は鍋を食べた。そうしてだった。 
 彼等は食べた後はまた修行に入った、立花はとかく時があればむしろ積極的に作って望月の修行を行った。
 家臣達もそれがわかっていてだ、屋敷に帰って来た主に笑いながら言った。
「では風呂に入られますか」
「これより」
「うむ」
 隠して言う彼等にだ、立花も笑って応えた。
「そうさせてもらう」
「はい、それでは」
「もう風呂は沸いております」
「早速お入り下さい」
「そして汗を流して下さい」
「済まぬな、いつも」 
 立花は家臣達にこうも言った。
「世話をかける」
「いや、それは言わぬ約束」
「それがし達は好きで殿と共におります」
「殿だからこそです」
「こうしてお仕えしているのですから」 
 だからだというのだ。
「そういうことはいいです」
「殿にはこれまで何かとよくしてもらってきました」
「戦の場でどれだけ助けて頂いたかわかりませぬ」
「非常に」
「ははは、拙者はいい家臣達を持ったわ」
 立花は彼等の言葉を聞いてまた笑って言った。
「まことに果報者じゃ、あの御仁に負けぬ位のな」
「ああ、あの御仁ですか」
「あの御仁も壮健な方ですな」
「実に」
「そうじゃな、拙者も見習わねばならぬ」
 立花はこうも言った。
「あの御仁はな」
「そう言われますか」
「殿もですか」
「その様にですか」
「うむ、実にな」
 家臣達にまた言った。
「そう思う、まさにな」
「あの様にですな」
「常に己を磨き」
「そして上を目指す」
「そうされたいですか」
「そう思った」
 強い声での言葉だった。
「まさにな、常に文武に励まれておる」
「そして己を高めですな」
「精進されている」
「そうなのですな」
「それを見るとな」 
 立花はまた言った。
「拙者もまだまだと思う、だからこそこれからはな」
「あの御仁の様にですか」
「励まれますか」
「精進されますか」
「そうしようぞ、負けていられぬ」
 彼にというのだった。
「そう思った、ではな」
「はい、では風呂の後はですな」
「また、ですな」
「武芸に励まれますか」
「いや、書を読む」
 そちらだというのだった。
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