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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十三話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その3)
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いしましょう」
私の言葉にクラーゼンが露骨に嫌な表情を見せたが気付かないふりをした。功績を立てさせると競争相手になると考えているのだろうが負けたら全てが終わるのだ、それよりはましだろう。メルカッツは一万隻を率いている。彼ならどんな相手でも多少の戦力差などものともしないはずだ。
問題は反乱軍だ、向こうがどんな陣立てで来るか。こちら同様後方に部隊を置くかどうか……。戦術コンピュータを見ると向こうも後方に二個艦隊置いている。となると正面は約四万隻か……、こちらとほぼ同数だな。ミューゼルが来援するまで十分に耐えられる、勝機は有る。
「オペレータ、イゼルローン要塞に通信を。我、反乱軍と接触セリ。至急来援を請う」
「はっ」
後はミューゼルの小僧を待つだけだ。急いでくれよ、小僧。間違っても迷子になるんじゃないぞ。
帝国暦 486年 5月 7日 01:00 アムリッツア星系 ミューゼル艦隊旗艦 タンホイザー ラインハルト・フォン・ミューゼル
「遠征軍が戻ってきた? しかも無傷だと? おまけにイゼルローン回廊で反乱軍と交戦中?」
通信オペレータの報告にクレメンツが何処か調子が外れた様な声を出した。そしてそのまま俺とケスラーに視線を向けてきた。
クレメンツの表情には何処か信じられないと言った色が有る。ケスラーも信じられないと言った表情をしている。俺も信じられない、遠征軍が無傷で戻ってきた? 一体何の冗談だ? この時期に戻って来るという事は反乱軍との戦闘は無かったという事になる、どういう事だ?
オペレータの報告が続いた。それによれば反乱軍はイゼルローン要塞の包囲を解き遠征軍の迎撃に出たようだ。そして駐留艦隊はその後背を衝く形で戦闘に加わっているらしい。
さっぱり訳が分からない、クラーゼン、シュターデンの二人は俺が考えるよりはるかに有能で反乱軍を煙に巻いて戻ってきたという事なのだろうか。有り得ないと思うのだが実際にイゼルローン要塞の包囲は解かれた。一時的な事かもしれんが要塞陥落の危機が去った事は間違いない。
「考えられる事は二つです。一つは遠征軍が自力で戻ってきた。もう一つは反乱軍が故意に見逃した」
ケスラーがゆっくりと発言した。まるで自分の言葉を検証するかのようだ。故意に見逃した、何故見逃す? そこにどんな利益が有る……。利益など無いではないか、帝国軍は反乱軍目指して集結しつつある……。
「そうか、そういう事か……。ケスラー、クレメンツ、ヴァレンシュタインの狙いはイゼルローン要塞ではない。遠征軍、そして駐留艦隊の撃滅だ」
俺の言葉にケスラーとクレメンツが顔を見合わせた。
ヴァレンシュタインはイゼルローン要塞を攻める事で遠征軍の恐怖心を煽った。同時に挟撃すれば勝てるという希望も与
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