暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
食事の予定は……

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来なかった。文字入力を進めていくが、タイプミスも多い。

 やはりおかしい。ひょっとしてこいつ、ひどく体調を崩してるんじゃないか? それで体力が限界にきてて、注意力もないし眠そうなんじゃないか?

「なぁ川内、今日調子悪いだろ」
「そんなことないよ? ほら、げんきー!!」

 そう言っていつぞやの俺のように両手で力こぶを作って、自分の元気さをアピールする川内。だがその声に張りはなく、力こぶを作る両手もくたっとしていて、元気がまったくない。逆に空元気を振り絞っているその姿が、妙に痛々しく見える。

「だから次に進もう」
「んー……分かった」

 ……んー……本人が大丈夫だと言うのなら、俺が反対してもこいつはきっと聞かないだろう。仕方なく授業を進める。

 授業開始から30分後。川内は、いつもより苦戦して文字入力を終わらせた。気になるのは、川内の息が浅いことだ。いつも大声でまくしたてる時みたいに、大きく息を吸ったり、盛大に息を吐いたりとかがない。気をつけて見てないと呼吸に気付かないぐらいの、浅い呼吸だ。

「フッ……フッ……」
「大丈夫か?」
「うん。だいじょぶ。だから先に進も?」
「……わかった。これからやるのはf4キーを使った連続操作だ。f4キーは、直前の操作を繰り返すって感じの、特殊な機能がある」
「うん……」
「予習してるなら問題ないだろうから、習うより慣れろでちょっとやってみっか。ここの小見出しに『文字の効果』を設定してみ」
「……わかった」

 さっきより輪をかけてぼんやりしてきた川内は、力が入ってないように見える右手でマウスを操り、苦戦しながらも、入力した文章の小見出しの一つを選択した。その中から枠線が青い立体的なやつを選んでいた。文字が立体的に見えるし、無難な効果だから、俺も結構使うやつだ。

「ん。やったよーせんせー」
「うーし。んじゃ、今度は次の小見出しを選択して、f4キーを押してみろ〜」
「はーい」

 目がトロンとした眠そうな川内は、次の小見出しを選択し……。

「……あれ?」
「……」
「せんせー……出来ないけど……」

 必死にf4キーではなく、『4』のキーを押していた。それはまぁいい。パソコンによってはf4キーと『4』のキーの位置が近く、f4キーを押したつもりで4のキーを押すことなんて、よくあるからだ。

 おれが不可思議に思うのは、川内がキーを押す度に、画面には『う』の文字が出力されているにも関わらず、川内自身はそのことに気づいていないことだ。こいつは異変に敏感というわけではないが、さすがに自分が打った覚えのない文字が表示されれば、それには気付く。にも関わらず、今の川内は、自分が入力した文章に、不必要な『う』の文字が次々と追加されていく事態に、まったく気が
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