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いっ!?」

「あん?」


 不意に呼ばれた来栖が振り向いた先に居たのは髪を後ろで纏め、ポニーテールにした栗色の髪の美少女だった。

 殆どの男子なら確実に見惚れる程だった、スタイルも悪くなく出るところは出て引っ込む所は引っ込んでいる。


「ほ、ほら、あたしよあたし!! 覚えてるでしょっ?」


 屈託のない笑顔で来栖を覗き込む少女を見た由加は警鐘を鳴らしていた。

 だが来栖は気にする事なく目の前の少女を見た。


「……誰だ?」


 本当は来栖本人はわかっていた――小学校三年の時に転校していった幼なじみ、加川有栖(かがわありす)だということに。

 だが彼自身に芽生えた悪戯心でそう言うと、覚えていない事に僅かに涙目になる有栖。


「そ、そんな……お、思い出せない? ほ、ほら、小学校三年の時に転校したじゃない」

「……ん〜? 居たか、そんな奴?」

「……え、えっと……ひ、ひっく……」


 今にも泣き出しそうな有栖――まさか【幼なじみ】を忘れてるなんて予想してなかった。

 風の噂で有川来栖がRB養成学校に入学すると聞き、彼に会えるという思いだけで遠い土地から一人戻ってきたというのに――。

 既に瞳に涙を浮かべ始めていた有栖を見て気だるそうに喋った。


「けっ! 相変わらず泣き虫だな、アリス」

「え……? な、泣き虫じゃないもんっ! ……うぇぇぇーん! クルスーッ!! 逢いたかった! 逢いたかったよーッ!!」


 涙を堪えきれず、アリスは涙を流しながらクルスに抱き着いた。


「な!? ば、バカ! 離れろって!」


 突然アリスに抱きつかれて狼狽するクルス、人前という事もあったからだろう。

 正門前での出来事に、新入生も立ち止まってその様子を見ている一方で由加は。


(お、幼なじみ……。に、兄さんに幼なじみが居たなんて……。しかも、明らかに兄さんに好意を抱いてるとしか見えない)


 兄に付きまとう悪い虫――そう判断した由加だが。


「おい、暑苦しいから離れろってアリス!」

「ひっく、ご、ごめんね……クルス……」


 涙を拭うアリスはクルスから離れる、大胆な事をしたと気付いた時には頬が朱色に変化していた。


「……ったく、別に俺に会わなくても問題ねぇだろ」

「そ、そんな事ないよ! く、クルス……昔苛められてたあたしを助けてくれたじゃん」

「……そういや、そんな事もあったな」


 一人に対して多数で苛める奴なんかカスでしかない、クルス自身はそう思っていたし、何よりも幼なじみが苛められていたというのも許せなかった。

 勿論クルスはそんな事は告げない――言う気等更々
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