Side Story
少女怪盗と仮面の神父 45
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えに変わった。
「顔が見えなくなる分、感情に寄り添うのは難しくなっちゃうけどさ。ならせめて、身体だけでも大丈夫だって、健康面での心配は要らないって、私に信じさせてよ。どれだけ遠く離れた所に居ても、どんなに月日が流れても、相変わらず元気に笑ってるんだろうなぁって、私に思わせて」
「……それは、ミートリッテも同じ……でしょっ! もう、何日もずっと、死んだみたいに……寝てた、くせに……っ」
「いや。今回私が寝てばっかりだったのって、主に私以外が原因だよね? 体調とか、ほとんど関係なかったよね?」
「ぴくりとも、してなかった、のよ?? 呼吸する音だって、耳を澄ましても聞こえなくて! 怖かった。このまま目を覚まさないんじゃないかって! 物凄く、怖かったんだからっ??」
泣きながら背中へ回されたハウィスの両手に真新しいネグリジェの背面を握りしめられ、強く引っ張られて、喉元がちょっとだけ、苦しい。
「むぅ。なんかちょっと違う気もするけど、暗示とは別口で死にかけたのは事実だし……うん。心配ばっかりかけてごめんね。本当に」
小さな子供をあやす感覚で、ハウィスの頭の天辺をさわさわと撫でて。
ふと、気付く。
「そういえば私、まだ言ってなかったね」
「……何、を」
急に止まった手を見上げる、恨めしそうな群青色の瞳に微笑み返し。
そして。
「おはよう。ただいま、お母さん」
「…………っ!」
抱え直した頭に、頬をすり寄せた。
「……っぅ ……つくっあ、ぁあっ ぁああああああああああ…………??」
耳元での囁きに、応えようとはしてくれたのだろう。
数秒の間を置いた彼女は、ぎこちない動きで唇を開き。
しかし、紡がれた音は言葉として構築されず、聴く者の胸の奥を引き裂く悲痛な叫びとなって、二人しか居ない室内に大きく反響した。
七年を掛けて当たり前になっていた、母子で交わす起床や帰宅の挨拶。
多分、今後一切会えなくなるわけではないが。
次にミートリッテがネアウィック村から一歩でも離れたら、この距離感で交わす機会は、ほぼ零になる。
残りわずかで貴重な『お帰り』をはっきりと聞けなかったのは、ちょっと寂しいけれど……だからこそ。
「私を見つけてくれて、ありがとう」
今はただ、互いの体を抱きしめ合う。
間近に迫る別れの日には、笑顔で『行ってきます』と言えるように。
笑顔で『行ってらっしゃい』と言ってもらえるように。
二人の涙が途切れるまで、互いの存在にすがりつく。
(ああ……私の人生『悪くはなかった』だなんて、過小評価も甚だしいな。お母さんとお父さんが二人ずついて。世話好きなおばあさんやおじいさんに見守られて。基本的には優し
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