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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 45
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え?」
 「目の下、真っ黒。」
 きょとんとするハウィスのこめかみに右手を伸ばし、親指で目尻を軽く撫でる。心なしか、お肌のハリもよろしくない。本格的な医療には疎いミートリッテにも一目で判る、完璧な寝不足症状だ。
 「駄目だよ、寝られる時にしっかり寝とかなきゃ。睡眠不足は万病の元。甘く考えて無理を続けてたら、情緒不安定やら食欲不振から始まって、終いには体力とか思考力とか判断力の低下に繋がるんだからね。水分は十分に摂ってた? 食事は? まさか、一日に一食分も食べてなかった、とは言わないよね?」
 「つ、ついさっきまで仕事が忙しかったのよ! 書き物や計算にも慣れなきゃいけないし、実働部隊の業務でも新しく覚えなきゃいけない事が山ほどあるし、それにっ」
 「忙しいなら尚更、休息を疎かにしちゃ駄目でしょう! 徹底した食事管理と適切な運動を組み合わせた計画性のある減量ならともかく、これ以上不健康な痩せ方したら折角の美貌が台無しだよ!?」
 「美貌って……。私は別に、どう」
 「「どうでもいい」とか言うつもりなら、今家にある食べ物という食べ物を全部、そのお腹の中に無理矢理詰め込んでやるからね。泣いて謝っても、最後の一口を食べ切るまでは絶対に仕事も外出もさせないから。覚悟してよ?」
 目を細めてじろりと睨み付ければ、気まずそうに顔を逸らして俯くハウィス。
 「……寝起きのミートリッテが鬼畜すぎる……。」
 「寝起きじゃなくても当然の成り行きです! 毎日三食きっちり食べて、短時間でも隙を作ってちゃんと寝るの! 自分の体調なんだから、ハウィス自身でしっかり管理してくれなくちゃ……このままじゃ、可愛い愛娘はお母様の事が心配で心配で、とてもじゃないけど、晴れ晴れしく出立なんてできないよ?」
 「! ミー……」
 「分かってる。いつまで経っても起きない私が気になって、時間を作っては様子を見に来てくれてたんでしょ? 心配させてごめんね。でも、私を気遣うあまりにハウィスが倒れちゃうのは……嫌だよ」
 「……っ」
 妙に固くなっている体を強引に動かし、金色のお団子頭を胸元に引き寄せてぎゅうっと抱き締める。驚いたハウィスが布団に腕を突っ張って少しだけ抵抗するが、それはほんの一瞬で硬直に取って代わり……やがて、嗚咽混じりの弱弱しい震えに変わった。
 「顔が見えなくなる分、感情に寄り添うのは難しくなっちゃうけどさ。だったらせめて、身体だけでも大丈夫だって……健康面での心配は要らないって、信じさせてよ。どれだけ遠くに居ても、どんなに月日が流れても、相変わらず元気に笑ってるだろうなぁって、私に思わせて」
 「……それは、ミートリッテも同じ……でしょ……! もう、何日もずっと、死んだみたいに……寝てた、くせに……っ」
 「いや。今回私が寝てばっかりだったのって、主に私以
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