Side Story
少女怪盗と仮面の神父 45
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
今度はちゃんと伝えられるかも知れない。
(自己満足だ。ここで何かしたって、現実は変わらない。あの日の後悔は、これから先もずっと消えたりしない。こんな想いには、なんの意味も無い。でも……それでも)
「手を……取っても、良い?」
正面の闇へ向かって、両腕を恐る恐る伸ばしてみた。
指先に触れるものは無い。
二人の声は答えてくれない。
実際には居ないのだから、それが当然。
この声は幻聴、あるいは耳奥に刻まれていた記憶でしかない。
答えてくれるわけがないのだ。
そんなことは分かってる。
分かっていた、のに。
(バカみたいだ、私)
空を切った期待感と身勝手な失意で、顔がくしゃりと歪む。
自分の果てしない情けなさに、ため息を溢しかけて
「っ!」
飲み込んだ。
「「ミートリッテ」」
色と形を持った十本の指が、正面の宙に現れ。
熱を伴って、ミートリッテの両頬にそっと触れる。
丸みを帯びた柔らかな左手と、節榑立った大きな右手が。
成熟前の輪郭を優しくなぞった。
「私達の、可愛い娘」
「ずっと、愛しているよ」
「「これからはどうか、笑顔で……」」
こんな言葉は、知らない。
こんなことは言われなかった。
この温もりも、言葉も。
赦されたい願望が作り出した、浅ましい幻? 醜い欲求の塊?
でも。
「「幸せに」」
ありえない光景に驚き立ち尽くすミートリッテの一歩手前で。
手首から腕が。
腕から肩が。
霧が晴れるように少しずつ、確かな形を取り戻していく。
真っ白な世界に、まだ元気だった頃の男女が姿を現していく。
そうして最後に見えた、晴れた日の澄み渡る空を思わせる青色の双眸と、深い森に差す影みたいな紺色の双眸は。
二人の顔は。
「…………そっ……か。そう、だったね。あの時、二人は……」
まるで、何もかも……苦痛も、哀しみも、やるせなさも、すべてを赦し、受け入れているのだと言いたげに。
そんな風に、大らかで穏やかで静かで優しい微笑みを、湛えていた。
笑って、くれて、いた。
「っ大好きだよ! 自分を護りたくて、逃げてばっかりで、面と向かっては言えなかったけど! ずっとずっとずっとずっと、二人が大好きだった! 今も、大好きだよ! 私を産んで! 育ててくれて! たくさんたくさん、愛してくれて……! ありがとう……っ??」
過去の残像と目の前の幻影が重なった瞬間、衝動に駆り立てられるがまま両親の首に腕を回し、形振り構わずしがみつく。
ほんの少し屈んで、自分の背中を優しく温かく包み込んでくれた二人は、決して本物の両親ではないけれど。
とうの昔に亡
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ