黒衣を狙いし紅の剣製 03
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「ティア〜、こっちこっち!」
店内に入ってすぐ私を呼ぶ大きな声が聞こえた。これまでに何度も聞いたことがある声だけど、ある意味未だに慣れない。
呼んでくれるのはまあいいけど、大声で呼ぶ必要があるとは思えないからだ。店の中に居る客は私が見た限りではあんたしかいないんだし。
「大声出さなくても聞こえるわよ。ここには私とあんたくらいしかいないんだから」
「あはは、ごめんごめん」
笑顔で謝られても反省しているように見えない……わけでもない。
スバルとの付き合いも訓練生の頃から考えれば長いものだ。今では別々に働いてはいるけど、機動六課で過ごした1年は私やこの子にとっても大きな1年だったと思う。エリオやキャロ達も含めて強い絆で結ばれたはず。それは今も変わらない。
そう心では思いながら素直になれないのが私だ。スバルの向かい側の席にため息を吐きながら座ったのが良い証拠だろう。
もう少し素直になってもいいんじゃないかって言われるかもしれないけど、親しい関係にあるからこそ恥ずかしいこともあるのと声を大にして言いたい。
「ティアナよ、今のは言葉は少し聞き捨てならんな」
水を出しながら話しかけてきたのは、ここ翠屋ミッドチルダ店の店主さんだ。
そう振り返ることもなく断定できた理由としては、この店はまだバイトを雇っていないと聞いていたこと。それに聞き覚えのある声というのが大きい。
「我の店が繁盛しておらんと言っておるのか?」
「ディ、ディアーチェさん!? いいいえ、そういうわけで言ったんじゃ……!」
正直に言っておくと、私はディアーチェさんが少し苦手だ。
いや苦手というのは語弊がある。頭が上がらない人として認識してしまっているのだ。
はやてさんに似ていることも理由だけど……それに加えてディアーチェさんって近づきがたいというか、近づいちゃいけない雰囲気があるのよね。
気さくに話せる人だっていうのは理解しているけど、何ていうか……カッコ良くて綺麗な大人って感じだし。それに王者の風格というか、自分よりも上の存在のように思ってしまう自分が居る。それだけに今みたいな反応をしてしまいがちだ。
「ふ、冗談だ。それに……実際今のところ客足は多くない。貴様らを含めて訪れているのは知人ばかりだ。繁盛してるとは言えん」
「何でお客さん増えないんでしょうね。立地だってそんなに悪い場所でもないですし、お菓子だってすっごく美味しいものばかりなのに」
「まあ……急に増えても困るのだがな」
客足を気にするような発言をした割にディアーチェさんの今の顔に焦りはない。
まあ無計画にお店を開く人でもないし、しばらく客が来なくても問題ないくらいの貯蓄はしてるんでしょうね。何年も前からなのはさんのご両親が経営している店で働い
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