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大淀パソコンスクール
様子がおかしい

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ないが、ちょうど真ん中ぐらいのところに、『1ページ』ボタンは存在する。

「これ?」
「いえーす。ぷりーず、くりっくみー」
「せんせーをクリック?」

 俺の渾身のジョークを真に受けた川内は、人差し指で俺のほっぺたをグリグリとえぐり始めた。確かに『どうぞ私をクリックしてください』と言ったのは俺だが、このえぐり具合は、すでにクリックの域を超えていると思うんだ。

「川内くん?」
「ん?」
「俺が言いたいことは分かってるな?」
「うん」
「では実行したまえ」
「はーい」

 さらに人差し指に力を込めて、今まで以上の勢いで俺のほっぺたをグリグリとえぐり始めやがった……

「わざとだな!? お前、わざとやってるな!?」
「えへへー」

 えへへじゃないッ!! と怒りをぶちまけそうになった瞬間、川内はきちんと俺の指示通りに『表示』タブをクリックして、『1ページ』ボタンをクリックした。早くやれよそれを……お前の力、予想以上に強いんだよ……グリグリされたせいで、口の中の歯がなんか痛いよ……

「おおっ。1ページ全体が見られるようになった!」
「そこのボタン押すと、1ページが丸々表示されるんだよ。それならわかりやすいだろ?」
「でも、大きさなんてほいほい変えていいものなの?」
「こんなの表示倍率なんだから、好きなタイミングで好きなようにバンドン変えていいんだよ。だから今みたいに全体を見たいときは倍率下げていいし、逆に細かい操作が必要なところなんかは、ズームアップして大きく表示していい」
「そんなもんなんだ……」

 俺の当然の指摘に対する川内の反応が腑に落ちないのだが……ちょっと待て。これって実はけっこうな盲点なんじゃ? 常日頃俺が感じていた疑問の答えが出るかもしれん。

「なぁ川内」
「ん?」
「ちょっと聞きたいんだけど、お前、『表示倍率』っていじっちゃいけないものだと思ってた?」
「うん。だって見た目の大きさ変わるし」
「そうか」

 教えてる生徒さんたちは皆、こっちから『倍率をいじりましょうか〜。そんなに小さかったらやり辛いでしょ〜』と促さない限り、自分からは絶対に倍率をいじろうとしない。この理由って、実は今の川内と同じだったり……? 表示倍率をいじれば見た目の大きさは変わる。それをみんな、大きさそのものが変わってしまっていると錯覚しているのか?

「川内、ありがと」
「ん? 何が?」
「今のこと」
「? ??」

 これは結構大切なことだ。生徒さんたちには、もっと『ガンガン表示倍率いじろうぜ!!』て教えよう。表示倍率はあくまで表示倍率。そこをいじったところで、入力した文字や図形の大きさは変化しないってことをちゃんと伝えないとな。

 川内に気付かされたことを簡単にメモっておき、
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