様子がおかしい
夜
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俺の復帰を喜んでましたけど……」
「まぁ、自分の性癖を認めたくないって気持ちは、私もよくわかります」
「はぁ……?」
なんだ? この『私の性癖は人に言えないニッチなところを突いてます』的な物言いは……? この人ばりのジョークなのか……? でもジョークにしては真剣味がすさまじいような……
「カシワギさん」
「はい?」
「私はオヤジフェチではありませんから」
「はぁ……?」
大淀さんのメガネがキラーンと輝く。いや、別にあなたがオヤジ趣味だろうがショタコンだろうが、そんなことはどうでもよいですし、それを理由にあなたに対する心象が悪くなったりはしないのですが……と思っていたら……
「……ハッ」
「?」
「わ、私は今……何を……?」
大淀さんが急にハッとして取り乱し始めた。顔がみるみる真っ赤になってきて、両手で顔を押さえてあわあわやっている。
「え、えと……その……カシワギさん?」
何この人おもしろい。
「はい」
「わ、私は今、何と……?」
「自分はオヤジフェチではない……と」
素直に大淀さんの言葉を反芻しただけだが、大淀さんはこの一言に過剰に反応し、輝くメガネのレンズ越しに俺をギンッと睨みつけ、今までにない厳しい口調でこう言った。
「忘れて下さい」
「はぁ……」
「いや、忘れなさい」
そんな言い方で教室長に命令されれば、いちインストラクターとしては承服するより仕方ない。
「はい。すみません。忘れました」
「まったく……カシワギさんも気をつけてくださいね?」
何をだッ!? 今のは俺が悪いのかッ!?
『では川内さんの授業と、基幹ソフトの開発をお願いします』と言い残した大淀さんは、帰り支度をさっさと済ませ、ばひゅーんと音を立てて教室を後にした。帰り間際のその寸前まで、大淀さんのほっぺたは赤くなりっぱなしだったから、きっとあの人は『オヤジフェチ』で間違いないはずだ。もしくは今、中年男性に恋をしているとかなのか?
大淀さんの性的嗜好を考えながら時計を見る。そんなことを考えている自分のヘンタイ具合も気になったが……時計は午後7時5分前。時間通りであれば、そろそろヤツが姿を見せるわけだが……
ガチャリとドアノブの音が鳴り、ドアがゴウンゴウンと音を立てて開き始める。来るのかッ……奴が来るのかッ!?
「や! カシワギせんせー!」
身構えていた俺の目の前に姿を表したのは、テンションが高いわけでも低いわけでもない、ひどくフラットな川内だった。今まで盛大に盛り上がった状態で来校することが多かったくせに、この前といい今回といい、普通の人みたいに来校してくるから、なんか拍子抜けする。手提げのバッグじゃなくてメッセンジャーバッグってのが、またこい
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