様子がおかしい
昼
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がよほど嬉しかったのか、岸田さんはその場で立ち尽くして、おいおいと号泣しはじめた。タムラさんとモチヅキさんが『何事!?』と岸田さんの方に目をやり、神通さんも悲痛な面持ちで岸田さんを見つめ、ソラール先輩はY字ポーズで伸びていた。ソラール先輩、そのリアクション、ちょっと違うんじゃないですかね?
「よかった……えぐっ……ホントに……」
「ま、まぁ、とりあえず座りましょうよ、岸田さん」
「は、はい……きょ、今日からまた、よろしくお願いします!!」
「はいよろしくでーす」
……しかし、大の大人の男をここまで叩きのめすとは……どれだけ過酷なブートキャンプをやったんだロートレクさんは……。
「カシワギ」
岸田さんの席のパソコンに電源を入れた俺の隣に、ソラール先輩がチャリチャリと鎖帷子の音を鳴らしながらやってきて、俺にそっと耳打ちしてくれた。
「ん? なんです?」
「教室隅っこのテーブルに、ロートレクが使ったタイピング練習用の手元隠しボックスがある。気になるなら見てみるといい。ブートキャンプの過酷さが分かるはずだ」
「はぁ……」
岸田さんのパソコンのOS8.1を起動させた俺は、起動を待っている間、その部屋隅っこに置いてあるという、タイピングブートキャンプに使用された手元隠しボックスを拝見してみた。
「……!?」
「岸田殿が、どれだけ過酷な訓練を受けていたのか分かるだろう?」
「確かに……」
段ボールで作られたその手元隠しボックスには……返り血であろうか……ところどころ血の跡がついている。なぜタイピングの練習で出血する?
そしてなによりも目を引くのが、墨汁が切れかけの筆で書かれたと思われるなぐり書き。墨がかすれ、文字にスピード感と勢い、そして威圧感のような物が感じられる。
――人間性を捧げよ
……だから!! 人間性って何だよッ!?
「何なんすかこの人間性って!?」
「シッ……カシワギ、声がデカい」
「意味わかんないです! 意味わかんないですよ!!」
半狂乱に陥る俺の肩を、冷静にぽんと叩くソラール先輩。先輩は俺に対し、親指で岸田さんを見るように促した。
岸田さんは顔面蒼白になって、ガクガクと震えていた。
「……」
「……」
「……人間性っ」
「ひっ!?(びくぅううッ!?)」
試しに、ぼそっと言ってみる。岸田さんは身体をビクッとさせ、肩を小さく縮こませて、さらにガクガクと震え始めた。そんなに厳しかったのか……。
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