301部分:第二十五話 公孫賛、同行を願い出るのことその五
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第二十五話 公孫賛、同行を願い出るのことその五
一人の男が出て来た。それは。
赤い髪を前に長く伸ばした鋭い目の男だ。黒く短い左前の上着に赤い細いズボンという格好だ。その男が出て来て言ったのである。
「その虎とは付き合いがあってな」
「貴殿の虎か」
「買っているわけではない。この山の中で少し知り合っただけだ」
こう関羽に話す。
「それだけだ。腹が減っているその時にお互いに餌をやり合っただけだ」
「虎となのだ?」
張飛はこのことに首を捻ってしまった。
「それはまた変わったことなのだ」
「俺にとっては変わったことではない」
男は何でもないといった口調で述べた。
「人間も動物も同じだ」
「そうね。貴方はね」
神楽はその男を見ながら口を開いた。
「戦う相手かそうでないか。それだけの違いというわけね」
「ふん、やはり御前も来ていたか」
「そうよ。八神庵」
神楽はここでこの名前を出した。
「貴方もこの世界に来ていたのね」
「来るつもりはなかったがな」
八神はこう神楽に返した。
「気付いたらここにいた」
「そう。私と同じね」
「貴様とは別に闘う理由はない」
八神はその鋭い目で神楽を見据えながら告げた。
「他の奴等ともだ。俺は相手が女でも闘うがだ」
「そうだな」
趙雲が応えた。
「どうやら貴殿はそうした者だな」
「闘うからには相手が誰でもだ」
八神はさらに話した。
「俺の前に立つのならその時は容赦はしない」
「その時はかよ」
「すぐに楽にしてやる」
馬超にも話したのだった。
「その時はだ」
「随分と物騒な奴だな」
馬超も思わず唸った。
「そうね。何か常に剣を持っているような」
黄忠もその八神を見ながら述べた。
「そうした鋭さを持っているわね」
「それで八神さん」
孔明は八神を見ながら彼に問うた。
「貴方は今どうされているのですか?」
「どう、か」
「はい。誰かのところにおられるのですか?」
「群れるのは嫌いだ」
八神の声もまた常に剣を持っているようなものだった。
「俺は誰の下にもつかん。そして仲間にもならん」
「そうなんですか」
「それよりもだ。神楽」
神楽に目を向けた。横にいる虎はそのまま彼の足元に猫の様に寝転がった。そしてそのうえでだ。ゆっくりと眠りはじめたのである。
「あいつも来ているか」
「ええ、その通りよ」
神楽は彼を見据えながら言葉を返した。
「来ているわ」
「そうか。それならだ」
それを聞いてだ。また話す八神だった。
「そこに行く」
「貴方達はこの世界でも闘うというのね」
「あいつがいるならだ」
八神の言葉は変わらない。
「そうする。それではな」
「今から行くのね」
「俺はそれだけだ。
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