ムカつくけど、安心する
夜〜明け方
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しい川内は、静かに俺の頭を下ろしていく。川内の顔が、ゆっくりと遠のいていく。
「ひやってするよー……」
「う……」
川内の言葉通り、俺の首筋に冷たい感触が合った。氷枕の冷たさが心地いい。なんせさっきまで、釜揚げうどんにされてるんじゃないかと思えるほど、身体が熱かったから。
「すまん……ありが……と」
俺の感謝の言葉を無視し、川内は再び俺のおでこに手を置いた。さっきまで氷枕を持っていたせいか、その手がひんやりと気持ちいい。
「んー……下がってきてるから、あとちょっとだね」
「う……」
「せんせー。がんばれー」
「手……」
「んー? 私の手、きもちい?」
「ん……」
「んじゃ、またしばらくこうしてる?」
「……うん」
「はーい」
一回やっちまったんだ……また同じことを頼んじゃってもいい。素直に……。額に触れてくれている川内の手に、この上ない安堵を感じた俺は、この釜揚げうどん地獄の真っ最中にも関わらず、再び瞼を閉じて眠ってしまった。
………………
…………
……
……
…………
………………
……体中がベタベタで気持ち悪い。なんだかネットネトの山芋が身体にまとわりついているような……。
「ん……」
眩しい明かりに瞼越しに目を刺激され、俺は目覚めた。体中がベッタベタで、汗が乾いた後特有の、ベタベタした気持ち悪さが体中を覆っている。
「うー……ベタベタで気持ち悪い……いま、何時だ……?」
カーテンの隙間から、陽の光が差し込んでいるのが見て取れた。あのあと落ちた俺は、そのまま朝まで眠ってしまったようだ。枕元に置いてあったはずのスマホを、手探りで探す。スマホの時計を見ると、朝の7時。なるほど。まさに、紛うことなき清々しい朝だ。これが夏休みなら、『くるっぽーくるっぽー』という鳩共の鳴き声が聞こえてくるほどの、清々しい朝だ。今は冬だから、そんなことはないけれど。
「……くっそ。重い……」
どうも先程から圧迫感がある。布団の上に何か重い物を乗せられているような……なんて疑問を思い、自分がかぶっている布団を見た。
「……」
「……クカー」
妙に布団に圧迫感がある理由が、すぐに理解できた。昨日、あれだけかいがいしく俺の世話をしてくれた川内が、布団の上に突っ伏して、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
部屋の中を見回す。川内の『夜戦主義』パソコンの電源が入ったままだ。昨晩は俺の世話をしてる最中に落ちたようだ。ベッドの下に落っこちている川内の右手には、濡れタオルが握られていた。俺の汗を拭おうとしてたのか。
汗臭い布団の中から右手をなんとか出して、自分の顔に触れた。これだけ全身が汗をかいてベッタベタだというのに、顔
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