ムカつくけど、安心する
夜〜明け方
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その話……初耳なんだが。
「なんだそれ? 俺は知らんぞ?」
「えとね。私がおでこ触った時に、カシワギせんせー『きもちい……』て言って」
「全然記憶にないんだけど……」
「んで私が、せんせーのほっぺたをこう……フォッ! って挟んで」
そう言って川内は、何食わぬ顔で、両手で俺のほっぺたを挟む。こいつ……俺が病人だからって、好き放題やりやがって……つーかその話、ホントに覚えてない。ウソじゃないの? 俺を辱めようという、川内の狡いデマなんじゃないの?
「んで、『しばらくこうしてようかー?』て私が聞いたら、せんせー、うれしそうに『うん』って」
「そんな子供みたいなこと、俺が言うわけないだ……」
完全否定しようとして、フと思い出したことがある。そういえば、意識がぼんやりしてたときに、誰かにほっぺたを挟まれて、すごく安心する夢を見たような……?
「あ、あれ……夢じゃなかったのか……ッ!?」
「ほら! せんせーも覚えてた!!」
おいおい……あんな三歳児みたいなこと、夢じゃなくて現実だったんかい……しかも、川内だったんかい……恥ずかしい……とたんに顔に血が集まってくる……
「まぁそんなわけでいまさらなの! いまさら!」
俺のほっぺたから手を離し、腰に手をやって『ハッハッハーッ』と高笑いしながら俺を見下ろす川内に、俺は純粋な殺意を覚えた。
残り少ない体力と気力を振り絞り、自身の黒い波動を抑えこむことに成功した俺。次に俺の胸に去来したのは、羞恥心。
「恥ずかしい……死にたい……くすん」
「んじゃ私はパソコンで勉強してるから。何かあったら呼んでね」
「もう……嫁に行けない……」
「そんときゃ私と夜戦してね!」
こんな時まで夜戦かよっ……ちくしょっ……!!
その後は自己申告通り、川内は折りたたみテーブルでパチパチとパソコンの自習をしつづけていた。俺は俺で再びベッドの上で布団にこもり、自分の熱が下がるのを待つ。
「……ねぇ、せんせー?」
「んー?」
「星の図形の中に文字を入れたいんだけど」
「図形を選択したまま……文字、打ってみろ」
「はーい……ぉお、できた」
図形のことはまだ教えてないのだが……こいつはこいつで、自分で色々とWordを触っているようだ。質問内容に、授業では触れてない細かい部分が増えてきた。
「……あれ? カシワギせんせ?」
「……んー?」
「行と行の間に点線を引きたいんだけど……」
「図形の中に……直線があるから、Shift押し……ながら、引いてみ」
「はーい……ぉお、線が引けた」
「線が引けたら……あとは『書式』タブの……『図形の枠線』てとこから、点線に変え……て、色を黒色にしろ……」
「はーい」
しかし……さっきの鍋
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