暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
ムカつくけど、安心する
夜〜明け方
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食欲が失せたらどうしようと少し心配だったのだが……それは、俺の大いなる取り越し苦労だったようだ。こいつの鍋焼きうどんは、体調を崩してるはずの俺を夢中にさせるほど、美味かった。

 そして、俺のそんな様子を、川内はキーボードを叩きながら眺めていた。

 最後のうどんをすすり終わり、寂しい思いをしたまま、残り少ない出汁をれんげですくう。二回ほどすすったところで、俺の腹のキャパシティも限界を迎えたようだ。

「ふぃ〜……ごちそうさまでした〜……」
「はい。お粗末さまでした。美味しかった?」

 癪だが……こいつにこんなことを言うのは悔しいが……。

「……うまかった」

 その言葉しか出なかった。そうとしか言えなかった。それだけ、こいつの鍋焼きうどんは絶品だった。

「よかった。んじゃ片付けるね。せんせーは身体が温まってる内に布団に入るんだよ?」
「ん……」

 俺の賛辞を受け取った川内は、以外にもニコッと笑っただけで、思ったより素っ気ない返事だなぁと違和感を覚えたが……

「♪〜♪〜……」

 川内が台所に鍋を持って行って洗い物をしている時、台所から鼻歌が聞こえてきた。耳に心地よくて、聞いてるこっちの心が、ポカポカとあたたまるような、そんな楽しげな鼻歌。それが、料理や後片付けをしている時の川内の癖なのか、それとも鼻歌が出てくるほど上機嫌なのかどうかは、俺からは分からなかった。

 だが、少なくともごきげんななめというわけではないようだ。チラッとだけ見えた横顔は、時々、不意打ちで俺の胸をざわつかせてくるときの、自然な笑顔だった。

 川内に釘を刺された通り、俺は身体がぽかぽかしているうちに布団に入った。先ほどと比べると、布団の中がかなり暖かいことに気付く。熱が下がり始めているのかもしれん。

「はーい。ただいま」

 さっきの鼻歌を口ずさみながら、柔らかい笑顔で川内が戻ってきた。ベッドのそばまで来て俺を見下ろし、頭を優しくなでてくれる。

「寂しかった?」
「なんでじゃ」
「つれないなぁせんせー」

 俺の頭を撫でていた川内の右手が、そのまま慣れた感じで俺の首筋をぺたりと触る。

「ふぁ……」

 不意打ちで変な声が出た。まさかわざとじゃないだろうなこいつ……?

「んー……まだ上がるかな」
「分からん……でも、少しあったかくなってきた」
「なら良かったじゃん。もうしばらくしたら下がり始めるかもね」
「……」

 俺の首筋から、川内の手が離れた。くそう……もうちょっと触ってて欲しかったなんて思ってないからな。

「ん? もうちょっと触ってて欲しかった?」
「そんな恥ずかしいこと、思ってないっ」
「えー……お昼すぎは『触ってー』て言ってたのに?」

 ……なんだ
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