ムカつくけど、安心する
朝〜夕方
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止めてしまった。左手で、身体がだるいのに、わざわざ上体を起こして……。
振り返り、ちょっと不思議そうに自分の右手を見つめた川内は、次の瞬間、俺に対して、この上なく腹立たしいニヤニヤ顔を向けていた。
「どうしたの? 心細くて寂しい?」
「違うわ……」
「心配しなくても、ちょっと行ってくるだけだから」
「……うるせー……」
「だからいい子で待ってるんだよーせんせー?」
ちくしょうっ……張り倒してぇ……俺の手を離して、その手で優しく俺の頭を撫でるこいつをッ……!! そして、そんな事で若干安心してしまう、自分自身のことも……。
病人の俺の目にはまぶしすぎる笑顔を浮かべた川内は、そのまま俺の部屋から出て行った。玄関が閉じる音と一緒に、『ガチャリ』という鍵を閉める音も聞こえてきたから、無事に鍵は見つけられたようだ。俺の財布を持っていってるかどうかは分からないが……。
一人になった途端、えらく部屋の中が静かになった気がした。
「う……」
時計の針の音しか聞こえない……くそぅ……あのアホがいないだけで、この部屋をこんなにも静かに感じるだなんて……そしてそれを寂しいと思ってしまうだなんて……屈辱だ……全部、この体調不良のせいだコノヤロウ……帰ってきたら、川内のアホを張り倒してやる……。
しばらく待てば帰ってくるであろう川内への、本気の折檻を堅く誓った俺の瞼が、強制的に閉じていった。
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