ムカつくけど、安心する
朝〜夕方
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さめざめと泣いた後、俺の体力に限界が来たようだ。段々と天井が三重に見えてきた。焦点が合わない。んー……手すら動かせなくなってきた。
「やば……」
めちゃくちゃ寒いのに、目が重くなってくる。自分は雪山で遭難してるんじゃないだろうかと思うほど寒い。身体の震えが止まらない。音が聞こえない。視界にモヤがかかってきた……まずい……落ちる……
すまん……川内……今日の授業……つき……あ……え……
………………
…………
……
うっすらと意識が戻ってきた気がする。少しだけ、部屋の中の様子が認識できた。
「うう……あああ……」
何かを言おうと思ったわけじゃない。ただ、口から空気がこぼれでた……そんな感じだった。俺は言葉にならない声を、今世紀史上最弱の吐息でこぼした。
「あ、お…た?」
なんだか誰かの声が聞こえた気がするが……誰だ思い出せん……そもそもここに人がいるわけないだろうが……
「ふぁ……」
誰かの冷たい手が、俺の額に触れた。その手は妙に冷たくて、触れられた途端、おれはつい情けない声を出した。
でも。俺は今、雪山で遭難してるほど寒いはずはずなのに……。それなのに、その手の感触がとても心地いい。
「ん…………だあが……うだ………………せー、が……れー」
やっばり誰かがいる……相変わらず視界にもやがかかっていて物が四重に見えて、自分の周囲に何があるのかわからないけれど。誰かが俺の額に触れていた。そのことが、弱り切って冷えきっている今の俺の心に、じんわりとしたぬくもりをくれた。
「んー……」
「ん? ……せ? ……し……?」
右手に渾身の力を入れ、額に触れている誰かの手に触れた。小さくて冷たいその手は、俺の右手にも心地よくて、いつまでも、ずっと触れていたいと思える手だった。
「ん……」
「ん?」
「手……きもちい……」
「んー? これ、き……い……?」
ついポロッと本音をこぼしてしまう。今の俺の頭では、何かを隠したり、何かウソを付いたりするなんて無理だった。感じたことを、感じたままボロボロと垂れ流す、はた迷惑な状態でしかなかった。
「う……ん……」
「んじゃ、しばら…こ…しとく?」
「う……」
「しか……いなぁカシワ……んせーは……」
俺の額に触れていた手が一度離れ、今度は両手でほっぺたに触れてくれた。相変わらず冷たい手で、触れられてるだけで身体は冷えてきてるはずなのに、その手の感触がとても心地いい。
「う……」
「きもちい?」
「ん……」
というより……なんだか安……心……
……
…………
………………
重い瞼が、少しずつ開いてきた。大淀さんに電話をかけた時よりも、
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