ムカつくけど、安心する
朝〜夕方
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「……なんとなくそんな気がしてました。今日はこちらを気にせず、ゆっくり休んで下さい。明日は休校日ですし」
「すみません……本当にすみません……よりにもよって生徒さんの人数が多い時に……」
「それよりも、早く体調を戻してください。お大事に」
「ありがとうございます……すみません……」
俺の必死の懇願に対し、スマホの向こうの大淀さんは、和やかに優しく、そう答えてくれた。
昨日、くしゃみと鼻水と咳が止まらず、頭がフラフラして備考欄すら書けない状況に陥っていた俺は、家に戻った後、ベッドに盛大にぶっ倒れて、そのまま眠ってしまった。
そして今朝。起きるには起きたのだが、どうしても身体が言うことを聞かない。起き上がろうにも身体に力が入らず、ベッドの枕元にあるスマホに手を伸ばすのが精一杯だった。
危機感を感じた俺は、手を伸ばしてスマホを取り、そのまま大淀さんに連絡を取った。彼女は昨日の段階で、俺が相当に体調を崩しているらしいことに気付いたらしく、すでに俺の代わりに昼の授業に出る準備をすすめてくれていたみたいだった。
「うー……」
しかし、ここまで酷く体調を崩したのは久しぶりだ……まさか、自分が起き上がれないほどに体調を崩すことになろうとは……無理に上体を起こすと、途端に世界中がトップスピードでぐるんぐるんと縦回転をし始める。これでは起きていられない。無理してベッドから起き上がっても、きっと立つことすら出来ないはずだ。
おまけに寒い。今はもうほとんど冬だから、掛け布団の上に毛布をかぶせて寒さ対策はバッチリのはずなのに、それでも寒い。昨日みたいに、骨の奥底の冷たさに、体中が悲鳴を上げている。歯がガチガチと音を立て、少しでも身体を発熱させようと必死になっているが、それでも身体は熱を帯びない。寒さが改善されない。寒い。寒すぎる。
「うううう……寒い……寒いよー……」
情けない言葉が出る。過去最高クラスにひどい風邪だ。医者に行きたいが、立てないんだから、そもそも医者に行くことすら出来ない。これでは治せない。今の俺には、寝ることしか出来ない。でも、あまりに寒くて、寝ることも出来ない……困った……これじゃあ風邪を治せない……。
こんな時、一人暮らしってのは寂しいなぁ……俺はこうやって、誰にも看取られることなく、たった一人で寂しく、この世を去ってしまうのだろうか……お父ちゃん、こんな情けない息子でごめんよぅ……お母ちゃん、孫の顔、見せてあげられなくてごめんよぅ……ネガティブ妄想の悪循環が止まらない。誰だって体調崩して一人で寝込んでいるときは、大なり小なりネガティブになるはずなのだが、今の俺には、そんなことに気付く余裕すらない。
まるで死神に取り憑かれたかのように、ネガティブ妄想に囚われた俺。ひとしきり
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