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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十一話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その1)
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になるな」

「他愛も有りませんな。イゼルローン要塞は難攻不落、恐れる必要など全くありません。しかも十日にも満たぬ期間を守れば良いのです。反乱軍は六度の敗戦が七度の敗戦になるだけです」
要塞司令部の参謀が詰らぬといった風情で大言壮語した。しかしそれを咎める人間はいない。皆同意するかのように頷いている。

誰もがイゼルローン要塞の堅牢さを信じ切っているのだ。“イゼルローン回廊は反乱軍兵士の死屍をもって舗装されたり” 帝国軍兵士が好んで使う言葉だ。私が問題提起をするほかあるまい。

「私はそうは思わんな、反乱軍を甘く見る事は危険だ」
「閣下!」
何人かの参謀が私を咎めるように声を出した、主に私の部下だ。残りは冷たい視線を向けている。

「どういう事かな、要塞司令官」
ゼークトが低い押し殺したような声で問いかけてきた。どうやらこの男も私の意見に不満のようだ。

「反乱軍が何の勝算も無しにイゼルローン要塞に押し寄せてくることは無い。前回はミサイル艇による攻撃、前々回は並行追撃作戦を考案してきた。二度とも失敗したが我々は危険な状態にまで追い込まれたのだ、油断はできない」
周囲を見渡したが皆不満そうな表情をしている。要塞の堅牢さを否定されたことがそんなにも面白くないのか。

「しかし、今回は僅か八日守れば……」
「だから危険なのだ!」
抗議しようとする参謀の口を封じた。こいつらは全くわかっていない。
「遠征軍が早ければ八日で戻ってくることは反乱軍とて分かっているはずだ。にもかかわらず要塞を攻略しようとするのは何故か?」

「……反乱軍は要塞を落とす自信が有る、卿はそう言いたいのだな」
「その通りだ、ゼークト提督。或いはかなりの長期間、遠征軍を足止めする自信が有るのだろう。そう考えて対処するべきだと思う」
「うむ」

最悪の場合は足止めどころか全滅という事も有るだろう。だがそれをここで言えば混乱するだけに違いない。今言えるのはこれが限度だ。ゼークトが腕を組み俯いて考え込んでいる。どうやらこの男も反乱軍が危険であることは理解したらしい。まあこの程度の事を理解できないようでは最前線の指揮官など務まる筈もない、当然か。ゼークトが腕を解いた。

「艦隊は要塞の外に置く、要塞主砲(トール・ハンマー)の射程内にて待機、反乱軍の動きを見る。直ちに準備にかかれ」
「はっ」
ゼークトの部下たちが敬礼をすると司令室を出て行った。それを見送ってからゼークトが私に視線を向けてきた。

何を話しかけてくるのか、或いは何を話すべきなのか、そう考えているとゼークトが声をかけてきた。
「反乱軍が要塞を攻略しようとすれば艦隊の無力化を図る可能性が有るだろう。要塞内に艦隊を保全した場合、メインポートを破壊されれば艦隊の出撃は出来ん。要塞司令官
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