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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
55.漆黒の乱入者
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混沌の皇女
(
ケイオスブライド
)
───この世界でその名を知らぬものがいない。“
夜の王国
(
ドミニオン
)
”という領土を持つ世界に三人しか存在しない最古の吸血鬼。
それならば、少女から感じられる気配や魔力に説明がつく。
しかし、ローブのいう通り何故、真祖が柚木に手を貸してくれるのか。
すると漆黒のローブの身体が闇夜へと溶け込み出した。
「最早立上ハ、三番目如キガ、止メラレル存在デハ無クナッタ。一番目デアッテモソレハ、同様ダ」
そう言い残して、闇夜の中へと完全に消えて行ったのだった。
確かにあいつの言う通りだった。今まででも厄介な状態だったがさらに三体の眷獣が加わったのを倒せるわけがない。
しかし、それでも諦めるわけにはいかない。
美鈴が命をかけて守ってくれたこの時間を無駄になどしてはいけない。
それに先ほどの金髪の吸血鬼、立上の様子は少しばかりおかしかった。まるで先ほどまで戦っていた人物とは別人のようにも見えた。
それが気がかりだ。
「いい顔つきになったではないか、柚木よ」
少女がわずかに笑みを浮かべている。
「なんで私の名前を?」
「そんなことは些細なことだ。今は、あの男を倒すことだけに集中しろ」
すると柚木が抱きかかえていた美鈴、それに美鈴が避難させたアレイストたちが少女の元へと集まっていく。
「あやつの侵入を阻止できなかったせめてもの詫びだ。此奴らの命は
余
(
わたし
)
が預ろう」
そうして次々と美鈴たちは虚空の中へと消えていく。
「あ、ありがとうございます」
それと、といって少女は柚木へと何かを渡してきた。
「これって!」
それは、銀に輝くメスのような形状をした刃物。“
無式吸型刃
(
アブソー・メサ
)
”が二本。
それも感じられる気配から眷獣が中に閉じ込められている状態だ。
「二本は奪い取れたが、後の二本は寸前にあいつが抵抗したせいでどこかへ飛んでいってしまった」
“
無式吸型刃
(
アブソー・メサ
)
”を奪い取るタイミングなんてなかったはずだ。
いや、一度だけそのチャンスはあった。漆黒のローブが残りの四本を投げようとし、それを火山の噴火のごとき眷獣で食い止めたあの時だ。
「次は、貴様が神になった時に会おうではないか」
そう言い残して虚空へ消えていった。
どんな理由があって助けてくれたのかは、結局わからず終いだった。しかし、それでからといって柚木のやることは変わらない。
まだ、わずかではあるが希望は残っている。
握りしめた二本の銀の刃を自らの腕へと突き刺した。
電流が走ったような激痛が身体中を駆け巡る。
腕から止めどなく膨大な魔力が流れ続ける。わずかでも気を抜けば、逆に魔力を吸い取られてしまいそうだ。
───耐えろ……耐えるんだ
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