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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
55.漆黒の乱入者
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らかに反応が違う。あの時は気絶はしていたものの息はあった。
しかし、美鈴は……
すると美鈴の背中に刺さっていた内の二本と南の眷獣が保管されているはずの“
無式吸型刃
(
アブソー・メサ
)
”が空中へと集まっていく。
それと同時に戦闘に巻き込まれないように美鈴が避難させたアレイストたちの方向からも四本の“
無式吸型刃
(
アブソー・メサ
)
”も宙を舞う。
それは虚空の一点へと意志を持っているかのように集中する。
すると“
無式吸型刃
(
アブソー・メサ
)
”が集まった空間に歪みが生じていく。
その歪みから漆黒のローブをまとった何かが姿をあらわす。かろうじて人の形は保ってはいるが、未だ足などは陽炎のごとく揺らめいており、何者なのか判断がつけられない。
するとその刹那。漆黒のローブめがけて大蛇が襲いかかった。
大蛇の顎がローブを噛み砕く。しかし、そこに実体でも存在しないように漆黒のローブを大蛇はすり抜ける。
「ここに何しに来やがったァ!」
金髪の吸血鬼が声を荒げる。
初めて彼の狂気以外の言葉を聞いた気がする。
どこかその声からは動揺。それに殺意と焦りが感じ取れた。
「死ニカケノ、分際ガ、騒グナ」
くぐもった声が聞こえる。まるで直接脳に語りかけて来ている様で気分が悪い。
それにその声を聞くたびに全身に悪寒が走る。
直感的に柚木は感じ取る。あの人物は危険だ。
今まで柚木が出会って来た中で最も危険な人物だ。
「黙れェ! とっとと失せろ!?」
金髪の吸血鬼の叫びに大蛇の母体が動き出す……はずだった。
動こうとした眷獣が巨大な何かによって真っ二つに裂かれた。
一瞬の出来事で理解が追いつかない。何が起きたのかも、何を行なったのかも、なぜそうなったのかも全てが柚木の理解できる領域をはるかに超えている。
「ぐはァッ──!」
金髪の吸血鬼が吐血する。
柚木たちがどれだけ足掻いてもほとんどダメージを与えれなかった彼にあそこまでの一瞬で追いやった。
「オ前ガ、他ノ吸血鬼ヨリモ、異質デハアルガ、神ニスラ届カヌ限リ、ワタシニ歯向カウノガ、間違イダ。……立上」
「だ、黙れ……もうテメェのいいなりなると思うなよ!」
するとフードからわずかに笑う口元が覗く。
「自我ガ戻ロウ、トシテイル……カ。流石、無駄ニ長イ時間ヲ、生キ続ケタ混血種トデモ、言ウベキカ」
漆黒のローブは大きく横に動かした。
「うぐぁ……!?」
金髪の吸血鬼は頭を押さえて苦しみ出す。
「早く、俺の前、から……消えろ! テメェじゃ、俺には……勝てねェ……とっとと失せろ!」
先ほどまでとは雰囲気が全く違う。
これではまるで柚木のことを逃がそうとしている様ではないか。
何が起きているのか柚木には理解ができない。
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