暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
55.漆黒の乱入者
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る。吹き飛ばされた左腕が宙を舞い地面へと不快な音を立てながら落下する。
しかし、金髪の吸血鬼は顔色ひとつ変えずにこちらへと不気味な笑みを浮かべる。

「幻覚を現実にする。さすがは“神意の暁(オリスブラッド)”の眷獣だがなァ。そう何発も連続でやられりャ、バカでも気づくっつう話だ」

幻覚を現実に変える。先程、作戦の中で美鈴からわずかだけ聞いた“純愛なる白兎(アフロディテ・ダット)”が持つ権能。
原理は柚木にはわからない。
しかし彼はそれを理解した上で幻覚にかかる前に自傷行為を行うことによってそれを回避したというのか。
先程の美鈴が作り出した不可視の壁を破壊したのも同じ原理だとするならば、狂っているとしか言えない。

「喰いちぎれ、“大蛇の母体(ヘラ・バジリスク)”」

その言葉を待っていたとでも言わんばかりに大蛇の顎が“神光の狗(アポロ・ガン)”の身体を一瞬のうちに喰いちぎった。
眷獣の消滅。それが意味するのは……

「美鈴さん!」

「これでテメェも終わりだなァ!」

眷獣の消失で魔力を喰らわれ、倒れそうになる美鈴に無数の蛇の群れが襲いかかる。
作戦は失敗だ。本来ならあの場で“大蛇の母体(ヘラ・バジリスク)”を倒し、眷獣の消滅によってできた隙に“無式吸型刃(アブソー・メサ)”によって奪い取る。これが美鈴から聞かされた作戦だった。
相手が魔力減少の危機に陥らなければ“無式吸型刃(アブソー・メサ)”は相手の眷獣を奪い取ることはできない。
無数の蛇の毒牙が美鈴の身体を蝕む。

「じゃあなァ……そこそこは楽しませてもらったぞ」

「──美鈴さんッ!!」

地面へと崩れ落ちていく。
それをただ柚木は見てることしかできなかった。
これで全てが終わった。
こちらの作戦は、全てなくなった。
もう打つ手は……ない。

「ま……だ、よ」

毒牙に蝕まれた身体で美鈴は立ち上がろうともがく。
そんな美鈴を哀れむように見て、指の骨を鳴らした。その瞬間、無数の蛇が美鈴の身体へと押し寄せる。

「……もう終わりだ」

美鈴の身体が見えなくなるほどに蛇が覆い尽くしている。
柚木では、彼を倒すことはできない。
どれだけの手を打ったとしても柚木には圧倒的に決め手がない。

「次はテメェの番だァ」

不敵な笑みを浮かべて金髪の吸血鬼。
その表情は、先程までの余裕を含んだ笑みとは違う。まるで何かを隠しているような感じだ。
───魔力切れ。
そんな言葉が頭をよぎった。
これまで無尽蔵だと思われていた魔力に底がようやく見えて来た。
今までアレイストや海原たちがボロボロになって彼と戦ってくれたのは全て意味があった。
やはり彼は化け物ではあるがその前に吸血鬼。魔力は無限ではなく有限。

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