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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
55.漆黒の乱入者
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「わ、悪い。助かった」
友妃がいなければ今頃、ただでは済まなかっただろう。先ほどから放たれている空間の歪みも火の球もどちらも異常なほどの魔力を帯びている。
あれらが直撃すれば、ただではすまない。
「ホウ……貴様ガ其方側ニ、ツイテイルトハ」
ローブの中で異様な笑みを浮かべているのが見えた。
今一度、武器を構え直してローブの方を向きなおる。
友妃が加われば先ほどよりは、隙を作り出すことができるかもしれない。だが、敵の実力は未知数な上、明らかに手を抜いているのがわかる。きっと本気を出せば、こちらは数秒ともたないであろう。彩斗の力だって未だ不確定要素が多すぎる。
つまり勝負をつけるなら一瞬しかないということだ。
彩斗が一歩踏み込もうとした───その時だった。前方に空間の歪みが出現する。いや、違う。出現するのが見えた。
前方への踏み込みまれた力を横へと飛び退く力へと強制的に変更する。骨が軋む音とともに体が悲鳴をあげている。
そんなことなど構うことなく再び、強く地面を踏み込んで飛び出す。
次いで前方に出現しかけている空間の揺らぎをサイドステップで回避した後に真横から長剣を突き刺した。それとともに空間が弾け飛ぶ。
爆発的な衝撃波を背に受けて前方へと超加速で進んでいく。
普通にこんな行動をすれば彩斗の体は壊れる。しかし、今ならこれだけの衝撃に耐え切れるとわかっていた。
多少のリスクなどローブの前では気にしていられない。
すると再び、前方に揺らぎが出現するのが直感でわかった。しかし、加速の勢いを得た彩斗の体は急停止できるような速度ではない。
「やば───!」
その時だった。
「彩斗君!」
上空から聞こえた少女の声。そちらに向く前に前方に人影が現れ、揺らぎかけていた空間を乾いた音とともに消失させる。
友妃が自らの刀で空間に仕掛けられた歪みを消し去った。
「助かった、友妃!」
早口で礼を言い、すぐに正面のローブへと視線を戻す。
あとは十数メートル。地を蹴り上げて一気にローブとの間合いを詰めた。
「うぉぉぉ───ッ!」
両手で強く握りしめ、鮮血をまとった刃がを漆黒のローブめがけて突き立てた。完全に決まった、と思った瞬間だった。
───パキッ
微かに何かが壊れるような音がする響いた。
次の瞬間だった。突き立てたはずの長剣の刀身が後方へと飛んでいくのを視界の端でとらえた。
「……え?」
何が起きたのか瞬時に理解することができない。しっかりと彩斗の手には長剣の柄が握られている。だが、刀身は先ほど後方へと吹き飛ばされていった。
そこでようやく何が起きたかを理解する。彩斗が持っていた剣が不可視の何かに阻まれ、刀身が折れた。
武器の破壊。それが意味するのは《死》だった。
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