暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
色々な意味で予兆

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の袖を、川内がちょんちょんとひっぱりやがった。

「……ねぇねぇカシワギせんせー」

 いきなり名字で呼んでくるから、なんだか心が過剰反応してしまう。いつも単に『先生』って呼んでくるだけのくせしやがって……一体何なんだっ!? まぁいい。心の動揺をさとられぬよう、努めて冷静に……。

「んー? どうした?」
「今さ。表のスタイル設定ってのをやってるんだけど」
「げふんっ」
「表を中央揃えにしてたんだけど、表のスタイルってやつを選んだら、表の中央揃えがなくなっちゃった」
「あー、それか」

 『表のスタイル設定』てのは、表の線の色やセル背景の色などがセットになってるやつで、それを設定してあげると、こちらでわざわざシマシマ模様にセルを塗ったり、文字の色を変更したりといった、面倒な書式設定をせずとも、Wordの方で全部自動で設定してくれるというすぐれものだ。

 でも欠点がひとつあって、スタイル設定をする前に表を中央揃えにしたり右揃えにしたりしてると、その書式を打ち消してしまう。どうも今回の川内は、そのトラップにひっかかってしまったようだ。

「『表のスタイル設定』てのは、表の中央揃えと右揃えをなかったことにしちゃうんだよ。だからやるなら、中央揃えをやる前にスタイル設定をしてやったほうがいいな」
「そうなのかー……無駄足だー……」
「まぁ大した手間じゃないだろうし、もう一回設定しなおしてみ。スタイル設定をしたあとで中央揃えにする分には、まったく問題ないから」
「はーい……」

 口をとがらせ、もう一度書式設定をしていく川内の様子を眺めた後、俺は再び自分の作業に戻る。このAccessのクエリってのが、使いやすいような使いづらいような……SQLを組むわけじゃないから楽といえば楽なんだけど……うーん……

「ねぇカシワギせんせー」
「んー?」
「難しい?」
「んー」

 テーブル結合ってどうやるんだこれ……あ、ちょっとまて。なんかリンクさせる方法あったな……リレーションシップだっけ。『データベースツール』タブの『リレーションシップ』ボタンを押した。そういやここでテーブル同士が線で繋がってるのを見た気がするわ。

「ねぇカシワギせんせー」
「んー?」
「順調?」
「んー」

 えーと……まずはテーブルを追加するのか……テキストを見ながら『テーブルを表示』ボタンを押してテーブルを追加していく……とりあえず全部追加しとくか。いらんテーブルは後から削除すればいいだろう。

「ねぇカシワギせんせー」
「んー?」
「あとで夜戦しよ」
「んー」

 んで、リンクさせたいテーブルのカラムをドラッグして重ねればいいのか……とりあえず顧客テーブルのIDの項目をこっちからドラックして……ちょっと待て。


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