色々な意味で予兆
昼
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「これ……よかったら、みなさんでお召し上がり下さい」
今日、他の生徒さんの誰よりも早く来校した神通さんは、開口一番そう言い、両手で抱えた大きな荷物の包みを開いた。包みの模様が唐草模様なのは、神通さんの趣味なのだろうか。それはまぁいい。
「これは……!!」
「貴公……ッ!!」
「お、美味しそう……です!!」
俺達の前に神通さんが広げたもの。それは、つぶあんときなこの、たくさんのおはぎだった。
「お口に合えばいいのですが……」
「てことはこれ、手作りですか?」
「ええ……」
「なんと……貴公がこれを……ッ!」
「え、ええ……」
「で、では早速……!!」
誰よりも早く手を伸ばしたのは、神通さんの元同僚にして友達の大淀さん。こういう時、本人の友達がいるととても助かる。なんせ、最初の第一手は遠慮しがちで、誰もが手を出すに出せない状況に陥るからだ。その点、神通さんの友達の大淀さんは強い。彼女は迷うことなくつぶあんのおはぎに手を伸ばし、両手で上品におはぎを食べ始める。
「んー……」
「……」
「どうですか? 作ったのは久々なんですが……」
「……ん!!」
……あ、大淀さんのメガネが光った。続いて大淀さんは、おはぎを口に咥えたまま一度姿を消し、電気ケトルにお湯をいっぱい入れて帰ってきた。そのまま急須にお茶っ葉を入れ、紙コップにお茶を注ぎはじめる。おはぎを口に咥えたまま。
「大淀さん? どうしたんですか?」
「ふぉふぉをふぅんふぃふぃふぁふぇふぇふぁ! おふぁふぃにふぃふふぇいふぇふ!!」
なんだ……この大淀さんにあるまじき、はしたない光景は……必死に俺達に何かを伝えようとしている大淀さんだが、口におはぎを咥えたままなので、彼女が何を言っているのかさっぱりわからない。
「どうやら神通のおはぎは、こちらもお茶を準備せねば失礼にあたるほど、うまいらしい」
「ソラール先輩、今のが分かるんすか!?」
「では俺も……」
ソラール先輩もつぶあんのおはぎを手にとって、こちらに背を向けて神通さんの方を見ながら、もぐもぐとおはぎを食べはじめている。
「……うまい! 大淀が大急ぎで今お茶を淹れている理由も分かる。これは、相応の姿勢で望まねば失礼にあたるほどにうまい!」
「そんな……そんなに喜んでいただけるだなんて……!」
「これだけうまいおはぎを作ることが出来るのだから、貴公は料理が上手なんだなぁ」
「そ、そんなこと……」
「まさしく太陽! この温かさこそ、太陽だ!!」
「そ、ソラール先生……ッ!」
最大限の賛辞を送るソラール先輩と、それを受けて感激している神通さん。それにしても神通さん、ソラール先輩のことがホント好きなようだ。先輩を見るその眼差しがまっすぐで、キラキラ
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