初めての一人部屋
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の意見は全部、×にされた。ぼくがいいと思うものが、いっこもないよ」
「だってお前、さっきから生活に必要ないもんばっかり」
「ぼくの好きなものは、必要のないものなの?」
俺は言葉に詰まった。…俺は何をやっているんだ。俺はただ、息子と二人で楽しく子供部屋を作りたかっただけなのに。俺はさっきから息子の好きなものを、片っ端から否定しているだけだ。
息子はまっすぐな視線に若干の反抗心を含めて俺を見つめてくる。…この目は、俺の目だ。数十年前の俺自身。トランポリンも、ハンモックも武器倉庫も巨大ロボのコックピットも、かつて俺だって同じように夢見たじゃないか。
あの頃の俺は…自宅をを忍者屋敷にしようとして方々に罠を仕掛けまくり、姉と両親を激怒させた。3人に囲まれてすんごい叱られながら俺は何を考えていただろうか。
―――みんな、ハンコで押したようにおんなじ家に住んで何が楽しいの?
「……俺は、大事なことを忘れるところだった……」
俺は赤いペンを抜くと息子の間取り図に大きく○をつけた。
「――全部採用だっ!!」
「パパ―――!!」
「コックピットの横に、食糧庫も作っちゃおうぜ!!」
「うわぁ、ぼくチョコボーとポテチ入れる!!これで連邦はあと10年戦えるね!!」
「そしてこう、窓の隅に斜めに瓶を設置してロケット花火を仕掛けておくんだ」
「ロケット花火?」
「砲台だ」
「パパ天才かよ!!」
……という感じで満面の笑みで意気揚々と台所に駆け込んだ俺と息子は、妻の怒号に一蹴されることになる。
特に俺は『いい歳をして子供に丸め込まれた上になに悪化させてんだクソが』と猛烈に罵倒された。
息子の手前、男の一人部屋について熱弁をふるって抵抗を試みたが『クローゼットに武器突っ込んで服は何処に仕舞う』『天井低いのにトランポリンとか自殺か』『あのアクロバティックな寝相を毎日見ていてハンモックだと?』と正論で畳みかけられ、全部却下された。
結局。
武器倉庫の替わりにと傘立てが置かれ、おもちゃの銃が2、3本突っ込まれている。窓辺に置かれた机には、俺自作のハンドルとレバーとボタンと照準器を設置して操縦席っぽくするところまでは譲歩していただいた。
とはいえミサイルが出るわけでもロボが動くわけでもないので、俺の渾身の操縦席は3日くらいで飽きられた。
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