初めての一人部屋
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が変な事ばかり吹き込むせいで、息子の語彙は順調に偏りつつある。いつかシメるが。俺はおもむろに武器倉庫に×をつけて、その隣の…なんだこれ?
「…また質問いい?」
「パパは質問ばかりだねぇ」
じゃあお前が質問の余地すらない単純明快な子供部屋の間取り図を提出しろよ、と云いたいのをぐっと呑み込み、部屋の片隅をナナメに横切る網のような図を指で示した。
「この網、なに?」
「ハンモック!!」
息子は力強く答えた。
「ふぅん…そう、ハンモック」
正直もうゲンナリしていたが、一応なに考えてんのか聞いてみる。
「どうして、ベッドとかじゃなくてハンモックにした?」
「南国みたいでカッコイイから!!」
と云い切ったあとで、少し考えてから「…男の秘密基地にはハンモックだし」と付け足した。流石に『カッコイイから』では理由づけが弱いと踏んだのだろうか。
「んー、パパも小さい頃、ハンモックに憧れたことあったなぁ…ただな、ハンモック、南国みたいっつったよね」
「うん!!」
「北国の子供が、ハンモックで寝てるの見たことある?」
息子は俺の言葉の真意をはかりかねるようで、?マーク全開の顔で首を傾げる。
「これ絶対、冬とか困るよね…」
「こまらないよ?なんで?」
「イヤ君めっちゃ寒がりじゃん!!冬は基本的に炬燵から首しか出てないじゃん!!完全なるコタツムリじゃん!!ハンモックってすごいスースーするんだよ?南国っぽいのは、基本的に常夏の島でしか重宝されないからだ!!」
「…そうか、わかった」
「分かってくれたか」
「ベッドの上にハンモックを」
「却下」
ハンモックの絵に大きく×をつける。
「大体お前、今回の一人部屋はお前の勉強机を買うからだと云った筈だが…なんで間取り図の中に机がないんだよ」
「んー…冒険に机はいらないから…?」
……妻がこいつとの意見のすり合わせを俺に丸ごとぶん投げた理由が、はっきりと見えた気がした。妻にはこいつとの『すり合わせ』は不可能だ。…正直、俺でもギリギリだ。
「この窓の近く。ここがいいんじゃないか?この…ん?なにこの丸いのは」
机を置かせようとした窓の近くに、丸とか棒とか描いてある。…何だ今度は。
「あー、そこはダメダメ。だいじな場所だから」
「何が大事なの」
「ガンダムのコックピットだから!!」
―――ハイまたなんか変な事云い始めましたよ?
「…ガンダム?」
「うん!悪い敵がきたら、ぼくが操縦してパパを守ってやるからね!!」
「コックピット却下。ここはガンダム内部ではなく、俺が頑張って買った郊外のマンション内部だから」
コックピットに×を付けた瞬間。ここへきて無敵かと思われた息子の顔が曇った。
「……ここは、ぼくのための部屋なの?」
―――ん?
「ぼく
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