その名は岸田。小説家志望
昼
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に投げ込み、バッグの口を閉じていた。
「大丈夫なんでしょうか?」
「ええ。分からないことは、わかる人に聞くのが一番です」
「何かアテでもあるんですか?」
「私の友人に、趣味で同人活動をしている人がいます。確かシナリオ執筆もしていたはずなので、一度彼女に相談してみます。だからカシワギさんは、悩まなくて大丈夫ですから」
「はぁ……」
「カシワギさんは、川内さんの授業と業務基幹ソフトの開発に専念してください」
「了解です」
大淀さんがそう言い、俺に微笑みかけてくれた。
……この職場、いい職場だなぁ……前の職場だと『とりあえずやれ』『いいからやれ』『出来ないのは分かったからやれ』と言われて、経験のない仕事をとりあえずの体で押し付けられ……そのくせフォローを求めたり相談を持ちかけたりすると『そんなん自分で解決しろ』と言われ……なんとか終わらせたら『感動がないんだよ。仕事ってのは、相手を感動させないとダメなんだよ』と意味不明のダメ出しをされ……それに比べて、ここはちゃんとフォローもしてくれるし、業務上の注意も後腐れないし……相談にも乗ってくれるし……本当の職場って、きっとこんな職場なんだよなぁ……
「カシワギさん?」
「はい?」
「涙目ですけど、どうかしました?」
「……いえ、この職場の素晴らしさに改めて感動していたところでして……ぐすっ」
「?」
俺の感動に共感できなかった大淀さんは、戸惑いながら『ではあとはよろく』と告げて、首を左にひねりながら帰宅していった。
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