その名は岸田。小説家志望
昼
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て、俺の方を向いた。
「メモ帳ないよ?」
「あります。ありますから……」
「ないよ?」
「ありますって」
「ないって。これだけ探しても見当たらないんだもん。ないよ。このパソコンおかしいんじゃない?」
アンタの目の前にあるんだよっ!
「ありますから」
「あんたもしつこいね」
「しつこいもクソも、ありますもん」
「だからないんだって。このパソコンおかしいよ」
なんだか俺も段々ムキになって来た。この人、いちいち言い方が癪に障る。大体、自分が見つけられないことをパソコンのせいにするって、どういうこっちゃ。
俺は胸ポケットからボールペンを一本取り出し、そのペンで目の前のメモ帳のアイコンを指し示した。ほら。あなたが見つけられなかったメモ帳はここにあるんですよー。どこもおかしくなんかないですよーだ。
「あ! そんなところに!! もー早く言ってよー!! 先生も意地汚いなー!!」
クッ……我慢だ……我慢の時だ……ッ!!
「で? メモ帳をどうするんだっけ?」
「き、起動……あ、いや……『ぐばっ』てして、下さい……ッ!!」
「やだよ。なんで?」
俺は生まれて初めて、自分の頭の血管が切れる音というものを聞いた。『ブヂィイッ!!!』って音、ホントに鳴るんだ……。
「岸田さんっ!!!」
「ひ、ひゃいっ!?」
つい立ち上がり、大声で岸田さんの名を呼んでしまった俺。岸田さんはそんな俺の変貌っぷりにびっくりしたのか、身体を少しビクッとこわばらせていた。よく見ると、目が泳いでいた。
……不思議とこの時、派手にブチ切れたはずの俺の頭の中の血管が、猛スピードで修復された。俺の頭は急速にクリアになり、意識が冷静になっていく。
「……えーと」
「は、はい……?」
「特に操作に問題はないようですが、操作の名称が少々変ですね。その辺はこれからの授業の中で修正していきましょう。正しい名称を少しずつでいいので覚えて下さい」
「は、はい……ホッ」
とにかく、岸田さんのパソコンスキルの習熟度を見るのは終わりだ。岸田さんは、覚え方はおかしいが、操作そのものは特に問題はないようだ。
次に見るのはタイピングだ。これは、決められた文章を制限時間内に打ち込んでもらうというテストになる。
「次に、岸田さんのタイピングの腕前を見せてもらいます。この文章を、30分で打ってみて下さい」
「は、はい……」
先ほどに比べて幾分マシになった岸田さんの物言いを確認した後、俺は一度席を立って事務所の自分の席に戻った。
「……ックアッ!!」
自分の席に戻った途端、全身の疲労が一気に襲いかかった。俺の精神がそこまで疲弊してたってことなのか……!?
「ハアッ……ハアッ……」
「
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