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大淀パソコンスクール
その名は岸田。小説家志望

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 先生どうしたの? 大丈夫?」
「し、失礼……通常、その操作を『開く』って言うんですよ」
「あそ。でも先生、これ知らなかったんだよね?」
「『開く』の操作を『グバッてする』と言う人ははじめ……」
「せんせー大丈夫なの? なんか不安だなぁ」

 うわこいつめんどくせえ!!  やっぱり言いたいことだけ言って、人の話を聞かないタイプだ!! 俺の悪い予感が的中した!!

「えーと、じゃあ次は、ウィンドウを閉じて下さい」
「はいはい……」

 どうも俺の事をいまいち信頼してないであろう岸田さんは、めんどくさそうにゴミ箱のウィンドウを閉じていた。『開く』は『グバってする』て覚えてたのに、『閉じる』はそのまま『閉じる』なのか……。この人の基準がなんだかよく分からない……。

「閉じたら次は、ゴミ箱のアイコンをドラッグしてみましょう」
「ドラッグて何? また変な言葉勝手に作ってるの?」

 コノヤロウ……張り倒してぇ……ッ!!

「えーと……ゴミ箱のアイコンを、画面の真ん中に移動させましょう」
「なんだよ最初からそう言ってよー。先生の言い方わかんないよー」

 俺の笑顔を形作っている表情筋に、ヒビが入ったことを自覚した。努めて笑顔でいるつもりだが、自分のおでこにほんの少しだけ青筋が立っているのが、自分でも良く分かった。

「……ック!!」
「やるよやるよやりますよーやりゃーいいんでしょー。はーい……ズリズリズリ」

 岸田さんはゴミ箱のアイコンをきちんとドラッグした。操作そのものは問題ない。問題ないのだが……

「はい先生、ズリズリしたよ」
「……」
「んで? いつまで続けるの? いいよっていわれるまで、いつまでもズリズリし続けちゃうよ? ほら、早く止めなきゃ。ほーらほーら」

 なんなんだ……こちらの神経をいちいち逆なでしてくる、この物言いは。しかも、操作をした後、いちいちこちらを向いて、ドヤ顔を見せてくる。それがまたハラタツ。

 今も岸田さんは、ゴミ箱を時計回りにぐるぐるとドラッグし続けながら、俺に向かって盛大なドヤ顔を決めている。ちくしょう……こいつが生徒じゃなくて気心の知れた友達なら、今頃問答無用で張り倒しているのに……ッ!!

「んで? 次は何すればいいの?」
「ック……め、メモ帳を起動させて……下さい……ッ!!」
「いいけど……意味あるの?」
「あるんです……ッ!!」

 ため息混じりに『はいはい』と言った後、岸田さんはアプリ一覧からメモ帳を探す。俺はその光景を見ながら、自分の言葉に少しずつ、トゲが生えてきている事を自覚した。

 アプリ一覧をしばらく眺める岸田さん。メモ帳は目の前にあるのだが、どうも目線はメモ帳を素通りしたらしく、画面をさらーっと見回した後、眉間にシワを寄せ
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