昔々の物語
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り、押し返していく。
「そうなのかもな。なんだか力が入らねぇんだわ」
言い訳なんか本当はしたくない。しかし、彼女を傷付けたくないという想いが余りにも強すぎて、幻竜は本来の力を発揮できずにいた。
「裏切ったから?ハルとユウを死なせちゃったから?」
自分が独房に叩き込み、結果として命を落とすことになったかつての仲間たち。それが心に引っ掛かっているから本気を出さないのかと問われると、彼は首を振る。
「違う。たぶん・・・な」
何が心に引っ掛かっているのか、可能性が多すぎて頭の中で纏められない。
トドメを刺そうと武器を持つ手を額に押し付けようとするイザベリーとそれを払い除けようとするグラシアン。二人の静かな攻防が繰り広げられている。
「そういえば、なんでルナの相手をあの子に任せたの?」
そんな中、脳裏を過った質問をぶつけてみることにする。それは先程まで自分と共に行動していた、他者を操る魔導士のこと。
「グランが私の相手をするために、余った子を当てたの?」
「いや、違うよ」
力で勝るグラシアンが、少しずつ少しずつイザベリーの腕を押し返していく。このままでは形成が逆転しかねないと判断した女性は、一度優位な体勢を捨てて、距離を取ることにする。
「あいつが自分から、相手をしたいと言い出したんだ」
「あの子から?」
乱れる呼吸を整えつつ、ゆっくりと立ち上がる。フラフラと今にも倒れそうになっているグラシアンは、何度も何度も深呼吸をし、ギリギリで意識を保つ。
「何か秘策があるのかな?」
「そうらしいな」
詳しいことはほとんどの人間が知らない。しかし、失敗の許されないこの任務で実行するということは、よほど自信がある策なのであろう。
「でも、あの子に私を止められるかな?」
「勝手に勝つ気でいるんじゃねぇよ」
痛む体に鞭を打ち、敵を見据える。
「お前はここで止めてやるから、心配するな」
「昔の目に戻ってきたね、グラン」
いつもとは異なり鋭く、獲物を見つけたような目をしている幻竜。ハンターのようになった彼を見た旧友は、嬉しそうに微笑んだ。
「私があなたを操れない?」
「うん。そうだよ」
二人の銀色の髪をした、全く同じ姿の少女たち。そのうちの一人・・・偽者と思われる方の少女が、不満そうな顔を浮かべる。
「あなたは知らないだろうけど、私の魔法は敵の魔力の大きさなんて関係ないのよ。どんなに強い相手だろうと、操ることができる」
実際に、以前操られたシリルの方がソフィアよりも、そして、操っていた術者よりも魔力が高い。そういった類いのことで勘違いしているのだと思ったルナは忠告するが、それ
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