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SAO−銀ノ月−
前夜
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「……どうして分かったの?」

「直葉はハンバーグを焦がしたりしないからな」

 キリトから聞いた話ではあるが、両親が留守がちで家事は兄妹で分担しているため、ああ見えて直葉は家事が得意な方だ。元々キリトに弁当を作っていた直葉に、自分の作った分も弁当を届けてもらうというリズの努力は認めるが、その程度の妨害工作を見破れないほど節穴ではない。

「むぅ……」

「……だから、ありがとう。こうしてリズと話してるだけで、俺はいいんだ」

 悔しげに膨れっ面をしているようなリズを見れただけで、俺は明日の決戦も勝てると確信できる。誰かが聞いたら冗談だと笑うような話だろうが、俺の気持ちの問題に限っては真実だ。

「……やっぱり不公平ね、こっちだけ《SAO》の記憶がないなんて」

「そうだな」

 ため息一つ、机に置いていたコーヒーを飲み込んでから、リズはそんなことを呟いた。《SAO》の記憶のことについて語っているものの、その表情にまるで恐怖の色はない。むしろこちらをからかうような余裕さすら見てとれて、俺も用意していたコーヒーを飲みながら肯定する。

「よろしくね、あたしの記憶」

「任された」

 そうして明日、ユナのライブにて――全てが終わる。


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