前夜
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
仲間が閉じ込められてしまい、事態は一刻を争う状況だったものの、フロアボス攻略戦に向かったために目当てにされていた攻略組は不在。
そこに居合わせたメンバーが、エイジにユナ、そして《風林火山》の一部メンバーだった。まだ攻略組になったばかりの《風林火山》は、メンバー全員が攻略戦に参加出来るレベルではなく、エイジと同じように攻略戦に赴いた仲間を待っていたらしい。
エイジが躊躇する間に、ユナと《風林火山》のメンバーは決意を固めていた。それらに後押しされたエイジをリーダーとし、そのパーティーの救援に向かっていった。まだ《血盟騎士団》に所属し、その装束に身を包んでいたからこそだ。もちろんエイジも、ボス攻略に参加できなかった鬱憤をはらし、自分もボスと戦えるのだと《閃光》アスナに示すためでもあった。
そして何より、ユナが助けにいくと言っているのだから、エイジにとって自分だけが行かない選択肢などなかった。必ずユナを守り抜いて、そのプレイヤーたちも助けてみせるという決意を込めて。
……そして結果だけを見れば、閉じ込められていたパーティーメンバー、全員を助けることに成功していた――ユナという犠牲を出しながら。彼女が攻略組に入るために伸ばしていた《吟唱》スキルは、確かに味方全員にバフを与える強力なものではあったが、同時に敵のヘイトを使用プレイヤーに向けるという弱点を抱えていたのだ。
常に安全区域である《圏内》でスキル上げをしていたユナはそのことを知らず、それでもこれ幸いとばかりに脱出の際の囮にスキルを使い……その命を散らした。ヘイトを稼ぐというスキルの仕様上、確かに囮になるには適していることは疑いようもない。問題は、自身の恐怖でユナを守りきれなかったエイジにあり、会話をしただけの《銀ノ月》や、居合わせただけの《風林火山》のメンバーに責任など全くない。
それでもエイジは、自らの弱さを棚に上げて彼らを憎まずにはいられなかった。そうでなければ、自分が何かに押し潰されて、ポッキリと折れてしまいそうで。
歌を繋がりとしてユナと浮遊城で友人だったレインにしても 、自分だけではユナの死を受け入れられないという理由だけで、賛同するはずもないこの計画を話すべきではなかった。もちろんエイジから話を聞いたレインは反対し、他人に計画を話そうとしたため、エイジ自ら記憶を奪わざるを得ない羽目になった。確かにユナの記憶を得るにあたって、友人であるレインの存在は避けられなかったものの。記憶を奪う際にそんなことを考えていた訳ではなく、エイジが楽になりたいという自分勝手な理由だけで、彼女は今も苦しんでいることだろう。
「ユナが……友達を傷つけてまで……!」
エイジはすんでのところで、口から勝手に出てきた言葉を最後まで形にすることを堪えていた。その言葉
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ