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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十話 ヴァンフリート4=2 再び
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験が少ないからというより臆病なのだろう。怯える事よりも敵が何故攻撃を仕掛けてこないかを少しは考えてくれ、所詮は儀礼式典用の飾り物か、真の軍人では無い。
「承知しました、哨戒部隊に注意しておきましょう。元帥閣下、反乱軍の基地に対して攻撃命令を頂きたいと思いますが」
「うむ、攻撃を許可する」
「はっ。オペレータ、全艦に命令、対空防御システムに注意しつつヴァンフリート4=2の基地を攻撃せよ。さらに哨戒部隊には警戒を厳重にするようにと伝えろ」
艦隊に攻撃命令を出すと艦隊が基地に近づき攻撃を開始した。五万隻を超える艦隊が攻撃するのだ、瞬時にして基地は破壊された。あっけない結果に皆白けたような表情をしている。艦隊はそのまま基地から少し離れた場所にある飛行場を攻撃したがこちらも瞬時にして破壊された。
他愛無い結果だ、何故こんな基地の攻略にグリンメルスハウゼン艦隊は、あのミューゼルの小僧は手間取ったのだ。あいつらが自分の仕事をきちんとしていればあの敗戦は無かったのだ、何が天才だ、役立たずが!
クラーゼン元帥を見た。破壊された基地を、飛行場を見て他愛なく喜んでいる。まだ今回の遠征の目的の半分しか、それも容易い方しか達成していない、それなのに他愛なく喜んでいる。一体何を考えているのか……。
問題はこれからどうするかだ、反乱軍が何処にいるか……、こちらから積極的に索敵するか、それとも哨戒部隊の報告を待つか……。敵が発見できないようであればより反乱軍の勢力圏内奥深くに侵攻するというのも選択肢の一つだろう。敵中奥深く侵攻し否応なく反乱軍を決戦の場に引き摺り出す……。戦場はティアマトか、アルレスハイムか……。
「イゼルローン要塞より緊急入電です!」
オペレータの緊張した声に皆の視線が集中した。イゼルローン要塞? 何が有った?
「反乱軍が大軍をもって襲来! 至急来援を請う!」
悲鳴のような声だった。その声に艦橋が凍りつくのが分かった。
皆、誰も声を出さない。出さないのか、それとも出せないのか……。イゼルローン要塞が落ちれば遠征軍は反乱軍の勢力圏内に取り残されることになる。イゼルローン回廊には要塞と要塞を攻略した艦隊が待ち受けているはずだ。無理に押し通ろうとすれば遠征軍は手酷い損害を受けるだろう。しかし、それを恐れて愚図愚図すれば敵中で補給切れという事になりかねない。
「シュ、シュターデン……」
総司令官がそのような情けない顔を周囲に見せるな! 馬鹿者が!
「落ち着いてください、元帥閣下」
そうだ、まず落ち着くのだ。この男の所為で慌てる事が出来ない。良い事なのだろうが、腹立たしさが募る。
「しかし」
「イゼルローン要塞は難攻不落です。そう簡単には落ちません。八日、八日持ち堪えれば我々と駐留艦隊で反乱軍を挟撃できます」
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