巻ノ九十二 時を待つ男その十
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「どうもな」
「そういえば立花殿は」
「よい暮らしばかりでのう」
生まれてからというのだ。
「いつも戦の時以外は家臣達に何でもしてもらい」
「それで、ですか」
「こうしたありあわせで作った鍋もじゃ」
そうしたものもというのだ。
「まずない」
「左様ですか」
「浪人だった頃も暮らしは辛かったが」
それでもというのだ。
「家臣達に助けてもらっておった」
「そうだったのですか」
「拙者には過ぎた者達でな」
その家臣達はというのだ。104
「いつもそうしてもらっておる」
「食も」
「今は別にしてな」
「今はどうしてでしょうか」
幸村は鍋を食べつつ立花に問うた、鍋は簡単に塩等で味付けをしている。立花が持って来た塩である。
「こうして共に食べられるのは」
「今日は昼はいらぬとな」
「そう言われて、ですか」
「ここに来た、しかしな」
笑ってだ、立花は幸村に話した。
「家臣達もな」
「立花殿が我等に修行をつけて頂いていることを」
「口では言わぬが知っておる」
「やはりそうですか」
「その相手が御主達とは知らぬ様じゃが」
それでもというのだ。
「気を利かして朝も昼もな」
「時を作られる様にですな」
「してくれておる、まことにじゃ」
立花は笑ってこうも言った。
「拙者には過ぎた者達じゃ」
「そう言われますか」
「拙者が浪人の時も世話をしてくれたしのう」
自分が言うには戦しか能のない彼にというのだ。
「まことによき者達じゃ」
「立花殿には過ぎた」
「そうした者達じゃ」
「そうですか、では」
「うむ、これからもあの者達を大事にしたい」
「そうですな、人を大事にせねば」
「全くじゃ、して真田殿じゃが」
立花は今度は幸村に言ってきた。
「拙者や他の大名と家臣への態度が違うな」
「そのことですか」
「家臣というよりは」
幸村と望月の今の距離も見て述べた。
「兄弟の様な」
「はい、実際に我等十一人義兄弟の契も結んでおります」
幸村は立花に正直に述べた。
「実際に」
「やはりそうか」
「はい、生まれた時と場所は違えどです」
「それでもか」
「死ぬ時と場所は同じだと」
「誓い合っておるのか」
「左様です」
実際にというのだ。
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