巻ノ九十二 時を待つ男その九
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「果てがありませぬな」
「そうじゃ、それは拙者が見ただけでじゃ」
「さらにですな」
「先がある」
まさにというのだ。
「強さには限りがない」
「そしてその限りのない強さを求め」
「真田殿とな」
「はい、必ずやことを為します」
「そうせよ、そして生きよ」
立花は望月にこうも告げた。
「拙者は死ぬ術なぞ教えておらぬ」
「あくまで生きる、ですな」
「そうした術を教えておる」
あくまでというのだ、ここで。
立花は望月に足払いを仕掛けた、並以上の者でも避けられないものだった。しかしその足払いをだった。
望月は紙一重でかわした、そこから立花の脳天を掌底で襲う。しかしその一撃もだ。
立花の身体をすり抜けた、そして立花は後ろに現れて言った。
「こうした様にな」
「如何なる状況でもですな」
「生きる、そしてな」
「かわすのですな」
「そうじゃ、攻めても常にじゃ」
「相手の動きを見て」
「かわすか防ぐのじゃ」
敵の攻めをというのだ。
「よいな」
「はい、わかりました」
「今拙者は見切りを使った」
「それもですな」
「御主も出来るな」
「はい」
実際に出来る、だから答えた。
「それがしも」
「ならばな」
「見切りも使い」
「そして敵の攻めをかわしてじゃ」
「生きるのですな」
「そうせよ」
確かな声での言葉だった、再び激しい組手に入っている。
「他の術もじゃが体術も攻防一体」
「常にですな」
「そうしたものでじゃ」
「その攻防を忘れずに」
「生きるのじゃ」
「そうせよ、御主なら出来る」
望月ならばというのだ。
「だからな」
「はい、では今宵も」
「修行をな」
「お願いします」
こう応えてだ、望月は立花との修行を続けていた。確かに夜に行うことが多かったが立花が暇な時は常にだった。
朝も昼も修行は行わ実質一日中であることが多かった。立花は幸村も交えて三人で飯を食うことも多かった。その中でだ。
立花は昼に修行の合間に二人と共に裏山で採った山菜や魚を鍋にしたものを食べつつだ、こんなことを言った。
「拙者はこうしたものはな」
「食されたことはですか」
「滅多にない」
こう望月に答えた。
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