第7話「正面突破」
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不思議なことに、誰一人として死者はいない。大きなケガもしていない。しかし、誰もがこの決戦の間、再び起き上がることは不可能であろう、というレベルで痛めつけられていた。
「よくもまぁそんな芸当ができるもんだ……」
「すごい……」
達也と絵里が感心する中、
「あっ、二階への道が開けましたよ!」
かずのこが二人の手を引く。兵士たちの奥、確かに上の階へとつながる階段が見えた。意外にも古めかしい、というか。現代に相応しい、機械文明特有ののっぺりとした趣だったビル内部には似つかわしくない程の、洋館にでもありそうな装飾の施された階段だ。
「暇を持て余したマフィアの遊びってか」
兵児がそうつぶやき、階段に足をかける。健が何か合図をする。恐らく、罠はない、ということだろう。探偵社のメンバーたちは、一斉にその階段を駆け上がり??
??そしてマシンガンによる一斉掃射を浴びた。
***
「??一階、突破されましたね」
「このビルの守衛形態をよく心得た作戦だ。人数が少ないのもあるが、いかんせん私の異能に頼りすぎだな。二階以降は徐々に人の手による警備は薄くなっていく」
「そしてダンジョン形式である上階は、『彼』にとっては通用しない……はぁ、厄介なものです」
ビル最上階??マフィアの統領たる白き少女、カミサキと、副官である最古参メンバーの一人、岡崎瑠伯が、侵入者たち、そしてこのビルについて語っている。幹部は瑠伯を含めて四人なのだが、残りの三人は黙って話を聞いているだけ。理由はいたって単純で、カミサキと瑠伯の知能についていけないため、会話に参加しても意味がないからだ。
『アンバー』という組織は??カミサキと瑠伯、そして一部の異能者という、非常に偏ったメンバーだけが力を持ち、他は烏合の衆と言っていい、そんなアンバランスな組織なのだ。
「祐介君と狼牙君はまだ帰ってきていませんか」
「ああ。転移手段のない祐介は仕方ないとして、狼牙はが戻ってきていないのは些かおかしい。任務失敗が響いているのだろうな。すぐさま帰還する、という考えに思い至っていないと見た。あれは非常によくできた異能の持ち主だが、反面、力に奢りすぎるところがある」
「そのように育てたのは貴方でしょう? 先生」
我が物顔で指摘する瑠伯に、カミサキはその白銀の瞳を細めて微笑む。瑠伯もまたうっすらと笑みを浮かべ、違いない、と返した。
「コントロールのしやすい人間は良いものだ。相手の手の内がわかっている、という事は、戦にとって有利に働く。だからこそ、コントロールのしにくい人間は非常に厄介だ」
「健にはこちらの盤面を逆にコントロールされてしまいます。そして江西達也??彼がいる限り、あらゆる作戦は無意味となる」
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