二人は順調
夜
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からはハイライトが完全に無くなり、無駄に生命力にあふれていた全身から生気が抜けてきているのが、手に取るように分かる。
「お、おい……」
「ダメだせんせー……夜戦じゃなかっただなんて……ショックだ……」
「あの……」
やばい……なんだこれ。俺は何も間違ったことは言ってないはずなのに……川内のこの様子を見てると罪悪感が半端ない。俺の良心にマチ針がグサグサと刺さってくる。
見ていて痛々しいほどに意気消沈した川内は、がっくりと肩を落として猫背のまま教室に向かってフラフラと歩をすすめる。ちっくしょ……いつもみたいに元気いっぱいじゃないと、こっちもなんだか調子が出ない。
いつもの席に座った川内のパソコンに電源を入れ、OSを選択してあげる。その間も川内はうつろな眼差しでOS立ち上げ中の画面をぼんやりと眺めている。なんだこの生ける屍は……まるで生気が感じられない。呼吸してるかどうかも怪しい。その目は、悪い意味で瞳孔が広がっていて反応がない。ここに医者がいれば、確実にこいつの瞳孔をライトで照らして『ご臨終』の三文字を突きつけているはずだ。
川内の周囲の空気が、どんよりしてて黒寄りの灰色に曇っている。じとっとしてて、沈み込んで淀んでいる。川内の消沈した気持ちが漏れ出しているのか……。
「……」
「……」
「……」
「……」
……ぁあくそッ!! 我慢できないっ!! この、沈み込んで痛々しい空気に耐えられないッ!!
「……わかったよぉおお!!」
「……へ?」
「夜戦でいいよ夜戦で!! 俺の負けだ負け!!」
俺の白旗宣言を受けた川内の瞳に、直後ハイライトが戻った。
「ほんとに? ホントに夜戦でいいの?」
「いいよ! だから機嫌直せよ耐えられんっ」
「ぃぃいいいやったぁぁあああああ!!! 夜戦だぁぁああああああ!!!」
……いいのか? 俺の夜戦認定を聞いただけで急に空気が軽くなった……表情の明るさが1000ワットほどアップして、灰色に淀んでいた空気が途端に暖色寄りの透明を取り戻した。……こんなことで機嫌治すのか? ちょっと素直過ぎない?
「よぉぉおおおし! 今晩も夜戦がんばっちゃうよぉぉぉおお!!」
「はいはい……」
いささかの疑問がないわけではないが、機嫌が治ったのならいいとしようか。これだけパワフルなこいつの元気がないと、こっちのペースがとてつもなく乱れるということもわかったし。
「んじゃせんせー!! 今日は何を作ればいいの?」
「昨日の続きではがきだ」
「今まで散々作ってきたのに?」
「そう。だけど今日は、お手本はない。この前みたいに自分で文面を考えて、自分で一からはがきを作ってみ」
授業ではスキル習得のために、どうしてもお手本通りに作らざるを得な
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