第33話<炎天下>
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だけだ。
無線は、いろいろな通信を傍受し続けている。美保関沖の敵の空母機動部隊は、ずっと動かないらしい。
時折かなり小さな敵機が単独で比較的上空を横切る。まるで対空砲火を刺激しないように用心して飛んでいる感じだ。
「妙に慎重だな……やはり連中も深海棲艦を探しているんじゃないか?」
もし逃げた「彼女」がまだ境港の旧市街の何処かに留まっているとすれば?
敵の航空機は、このエリアには近づけないのが現状だ。すると敵より先に私たちが発見出来る可能性が高い。
陸軍も、まだ境港の岸壁での残骸回収でバタバタやっているし……この無線機は軍用だから特別な暗号通信もある程度は傍受できる。日向と妖精のやり取りもちょうど入ってくるな。
「駅周辺は特に問題なし」
さっそく妖精からの通信だ。
「了解」
日向は、きびきび答えている。
「なあ、日向」
「何だ」
「良いことあったんだろう? ハルにも教えてくれよ」
「お前には関係ない」
すると別の妖精の通信が入る。
「関係ないって言うからには、やっぱり良いことがあったんだ」
「う、うるさいぞ」
珍しく日向が感情的になっている。
「まあまあ……」
ちょっと間が空いて
「ハルも良いことあったぞ。墓参りが終わったら今日は神社で盆踊りだな」
「……」
日向が、こちらを向いて手を振っている。
「なるほど、一種の暗号か」
私も手を上げて応えた。
彼女は妖精に指示を出す。
「ハル、そのまま上空で待機」
「ラジャー」
ハルの返事を受けて、こちらに向かって駆けくる航空戦艦。夏の芝生の上を飛行甲板を装着した艦娘がやって来るというのは、なかなか絵になるな……いや、それは、どうでも良いことか。
彼女は報告する。
「司令、発見です」
私も応える。
「あのハルとか言う妖精、しっかり仕事は、するんだな」
彼女は苦笑した。
「口は悪いですが、能力はあります」
「そうらしいな」
私はエンジンを始動させた。
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