先輩は変な奴 担当生徒も変な奴
夜
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ソラール先輩が家路について1時間ほどの間、大淀さんから事務関連の仕事の説明を受けた。といっても、実際に事務仕事を担当しているのは大淀さん。俺が出張る機会というのはほぼ無い等しいらしい。実際に俺が行う必要のあるものはクローズ業務。しばらくすると、俺は一人で夜の教室を切り盛りしなければならなくなる。レジ締め、日報の記入、オーナーと大淀さんへの業務終了メール……非常勤だからかなのか、それともカルチャースクールだからなのか……実際にクローズ業務で行うことは少ない。
「さて……」
一通り説明が終わったところで、俺が座る席の隣に立ち、日報の描き方を教えてくれていた大淀さんが、メガネをくいっと上げて、背後の壁にかけてある時計を見た。時計は午後7時5分前を指している。ソラール先輩のオリエンテーションは結構な長さだったようだ。それだけ貴重な話をたくさんしてくれたということか。アンニュイな太陽のイラストとケッタイなポーズにばかり気を取られていたけれど。
「もうしばらくしたら、来ると思いますよ?」
「新しい生徒さんですか?」
「ええ。今日は私もここにいます。困ったら遠慮せずに声をかけて下さい」
「はい。ダメな場合はそうさせてもらいます」
「大丈夫。生徒さんは明るくて接しやすい子ですから」
「お知り合いなんですか?」
「ええ」
そうして俺が大淀さんから励ましのエールを頂いている最中、ガチャリという大げさな音が事務所内に鳴り響き、入り口のドアノブが90度回転した。どうやら、件の新しい生徒さんが来校したようだ。緊張する……。
「来たみたいですね」
「お、おぉぉおおおおお」
緊張でつい情けない声が出てしまう俺を尻目に、無情にも入り口の重いドアが開いていく。『ゴウンゴウン』という音が似合いそうなほどに、重苦しく、もったいぶって大げさに開かれていくドア。
「ご、ゴクリ……」
「ぁあ、そうそうカシワギさん」
「は、はい?」
「生徒さんの名前ですが……せん「やせぇぇぇぇええええええええん!!!」
唐突にドアの向こうから聞こえた、女の子の轟音のような叫び声で、大淀さんの言葉にキャンセルがかかった。
「うるさッ!?」
つい本音が口をついて出た。思わず両耳を手でふさぐ。ドアを見ると、大きく開かれたドアの向こう側に、背の高さがちょうど俺の肩ぐらいの女の子が、フラッシュライトのような眩しい笑顔で大の字で立っていた。真っ赤なパーカーがよく似合っている。でもすんげー声デカい……なんか耳がキーンてしてるし……
「ぁあ川内さん、いらっしゃい」
「大淀さん来たよ!! 夜戦しに来たよ!!!」
「夜戦ではないですけど、お待ちしてました」
大淀さんと知り合いらしい挨拶を交わしたその女の子は、その満面の笑顔のまま俺
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ