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大淀パソコンスクール
先輩は変な奴 担当生徒も変な奴

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 ボタンダウンのワイシャツとスーツに身を包み、共に戦争を闘いぬいた頑丈な手提げのかばんをひょいっとかついだ。俺は今日、生まれて初めてパソコン教室の授業を行う。

「こんな時間に出勤ってのは初めてだな……」

 時計を見ると、時刻はお昼過ぎ。俺の初授業は予定通り夜からだが……その前に空いた時間を利用して、同僚の講師の方との顔合わせと、その講師からの簡単なオリエンテーションがあるそうな。それで実際の授業は午後7時からというのに、こうやって午後3時頃からの出勤をしている。

 最初こそ俺も『ぇえ〜……授業開始の4時間前に出勤ですか……』とげんなりはしたのだが、その分の時給はきっかり出るという話だし、だったらありがたい機会だと受け入れて出勤することにした。こういった時間にもしっかりとお給料をくれる……こんな当たり前のことに感動するあたり、俺はまだまだ前の会社に毒されているようだ。

「お疲れ様です! 今日からよろしくお願いします!」

 教室に到着。入り口のドアを開くと同時に、いつもより若干大きめの声で挨拶をする。こういうことは最初が肝心だ。きちんと挨拶をして、印象を良くしておかなければならない。

「ああ、カシワギさん、お疲れ様です」
「はい。大淀さんもお疲れ様です」

 大淀さんが、自分の机に座ってパソコンのキーボードをパチパチと鳴らしながら、俺に笑顔を向けてくれる。愛想笑いには見えない本当の笑顔だ。彼女がこうやって自分の机で事務作業をしているということは、今の時間はもう一人の講師の人が授業を行っているらしい。

『先生、写真がね、うまく動かせないんだけど……』
『ああ。その場合は"文字列の折り返し"を……』
『タイトルを紙の真ん中に持ってくるって、どうやるんだっけ先生?』
『"ホーム"タブをクリックして……』

 パーテーションで綺麗に区切られた隣の教室からは、楽しそうなおじいちゃん二人と、若い男性の声が聞こえてきた。その若い男性が、どうやらもう一人の講師のようだ。落ち着いていて、かつほがらかなその声に、その人の人柄が感じられる。いい人のようだ。なんだか声がくぐもってるような気がするんだけど、風邪気味でマスクか何かをつけてるのかな?

 少し気になるのは、金属がこすれるようなチャリチャリという音が、先ほどからずっと教室の方から鳴っていることだが……何だこの音……どこかで聞いたことあるような……なんだっけ。

「今の授業はもう少しで終わりますから、ここの席のどこかに座って待ってて下さい」

 大淀さんはそう言って、自分の向かいにある席に手を差し伸べていた。大淀さんの周囲には3つほど空いた席があり、講師はその中から出勤した順で好きな席についていいらしい。すべての席には、少し古い型のPCが置いてある。ディスプレ
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