プロローグ
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こりと笑う。うわー……この人の笑顔、すんごい綺麗だなー……なんか見とれちゃうよ……
「……」
「? 何か?」
「あ、いやいや……」
不思議そうな顔をする大淀さんから慌てて視線を外す。照れ隠しで腕時計を見た。時刻はすでに六時半。季節は秋。目立って寒い日はまだないが、これぐらいの時間になると、外はすでにほの暗い。
「ぁあ、もうこんな時間なんですね。長々と付きあわせてしまいましたね」
「いえいえ。それよりも、今日は授業はないんですか?」
「今日はありません。事務仕事がメインです」
なるほどと思いつつ、借り受けたテキストの山とパソコンが入った重いバッグをよっこいしょと持ち上げ、席から立ち上がって帰り支度を整えた。上着を羽織って前を閉じ、ずっしりと重いバッグの取っ手を握る。
「では大淀さん」
「はい。来週火曜日の午後5時ですね。お待ちしてます」
「はい。それでは失礼します」
「お疲れ様でした」
本数冊にノートパソコン……激重なバッグを肩にかけ、教室を出た。おかげで教室のドアを開ける時に多少ふらついたが、幸いなことに、フラフラした情けない瞬間を大淀さんに見られてはなかった。
「……大淀さんか」
なんだか胸が踊る。あんな美人さんが仕事仲間で上司だと、今後の勤務も潤いのある、素晴らしいものになりそうだ。本当はこういうことはいけないのだろうが、やはり同僚や先輩に美人さんがいると、それだけでテンションが上がる。
「うーし。がんばるかー」
そう口ずさみ、両手を空高く突き上げる。もう夜のように暗くなってしまった空には……後に出会うことになる、フラッシュライトのような笑顔が眩しい『夜戦バカ』のように、眩しい月がぽっこりと浮かんでいた。そいつは月のくせに珍しく、極めて激しい自己主張をしていた。
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